ハジマリとオワリの分かれ道







彼の歩いているのは山道。
そこの道と呼べなくもない土の部分を足早に進む。
誰も通らないような此処が草で埋もれてしまわないのは毎年
少なくとも2人は此処を通りその先へ行くからだ。




「松陽先生…」




かつての師である、その人の葬られた場所に。







ハジマリとオワリの分かれ道







彼がいつ死んだのか
本当のところ正確な日は知らない。
だから桂は年末に来ることにした。
1年の最後にその年のことを報告し、来年の抱負を抱いて帰る。




「松陽先生、お久しぶりです。」




質素な墓標。
此処に先生が眠っている訳でもない。
ただ、桂と銀時と、それから高杉が選んだのがこの場所だった。
江戸が一望できる山の上




「今年は、お話することが沢山あるんです。……ん?これ…」




手向けの花を置こうと腰をかがめると目に入ってきた煙管。
こんなのもを手向ける人物に心当たりは1人しかなく
触れた煙管がまだ微かに熱を持っているのを確認した桂ははっと後ろを振り返った。




「高杉…」

「よぉ」

「お前も来ていたのか」




いつの間に背後に来たのか
いつもと変わらない出で立ちの高杉の唇がゆるやかに弧を描く。




「ああ…」

「高杉……」




目の前の桂ではなく、ビルの立ち並ぶ江戸を見下ろしながら高杉は何を思うのか。
明らかにいつもと違う雰囲気の高杉にかける言葉が思いつかない。
否、今は話しかけてはいけない気がした。
桂は視線を墓標へと戻す。




「松陽先生。今年は本当に色々ありました…。銀時と再会し、その友人たちにも会いました。」




賑やかなよろず屋の面子を思い出して頬が緩む。
高杉は微動だにせず江戸を見下ろし続けていた。




「エリザベスという戦友も出来ました。先生……江戸はやはり腐っています」




桂も江戸へと視線を下ろしながら、でも、と続ける




「でも、俺はこの江戸を壊すには大事なものが増えすぎました。俺にはもうこの江戸を壊すことはできません。
江戸は腐っています。俺は江戸を変えていきたい。」




ゆっくりと振り返った高杉と視線が絡み合う。




「高杉とはもう同じ道を歩むことはできません。」

「…俺たちは元から同じ道なんて歩んじゃいねぇ」

「ふ、そうだったな。…先生、こいつは相変わらず天の邪鬼で、融通の利かない奴です…」

「頭が固いのはお前ぇの方だぜ」




予備の煙管だろうか
火をつけたそれから煙を吐き出す高杉をぼんやりと見つめる。





二度と道が重なることのないと分かってなお、高杉への想いを捨てれない俺はどうすればいいのでしょうか…教えてください先生…





言葉に出来ない問いに答えるように煙草の香のする唇が桂のそれに重なった。












―END―








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