破壊への円舞曲











微かに伝わってくる揺れ。
趣味のいい屋形船に桂は乗っていた。
月を愛でる窓枠には、高杉が座っていた。
愛用の煙管を吹かしながら高杉が口を開く。




「こんな処でお前と会うとはなぁ」

「偶然だ。だいたい貴様どんな目をしてるんだ、あんな人ごみの中から見つけ出すなど」



しかも敢えて言うならば、変装していた桂をだ。
その問いに高杉は喉を鳴らして笑った。



「近くにいればにおいで分かる。俺がお前ぇを見間違えるわけがあるめぇよ」

「、どんな自信だっ」



一瞬反応の遅れた桂に高杉が笑いを深める。






崩壊への円舞曲







「…先日、真選組が荒れたとの噂を聞いた。」

「それで?」

「お前の仕業か?高杉」



桂が高杉を見上げる。
浮かべていた機嫌のよい笑みを引っ込め、その視線を受け止める。



「だったらどうする」

「別にどうもせん。しかし武力での攘夷は…」

「武力じゃねぇよ。俺はこの件について1度も自分から刀を抜いちゃあいねぇ」



桂の眉が寄る。
噂、と言ったが本当は坂本経由で詳しいことを聞いていた。
銀時が大けがを負ったことも



「信じてねえ顔だな。俺は伊藤を少しその気にさせてやっただけさ。軍隊を貸してやって、な。」

「……あの場に銀時が居たことを、知っているか?」

「あいつも間の悪い男だ」



そこで高杉は窓から離れ、桂のほうへ寄った。



「そんなに真選組の連中がお気に入りか?」

「誰もそんなことを言ってないだろう。俺はただ武力での攘夷を反対しているだけだ」

「クク、ならいい」



もし桂が真選組を庇うような言葉を発すれば、すぐにでも残党を消しにかかるつもりだった。
桂の瞳に自分以外の誰も映したくない。
それは高杉の中にある確かな狂気だった。



「何も問題は解決していないがまあ良い。俺はもう行くぞ」

「どこに」

「銀時が大怪我を負ったらしいからお見舞いにだ。お前のせいで遅くなった」




桂のその言葉を聞いた瞬間、高杉の纏う空気が変貌した。
思わず桂の手が鞘にかかる。



「久々の逢瀬も早々に、行くような処でもねぇだろ」

「しかし、明日になればせっかく買ったケーキが無駄になる」



高杉は隠すことなく思いきり舌打ちした。
鈍感にも程がある。
誰であれ、高杉を少しでも怒らせれば慌てて機嫌取りにかかるか逃げ出そうとするのに、桂だけはそれをしないで益々機嫌を損ねるようなことばかりする。
そんなところも好きだが、今は。



「放っておけ。何なら明日俺も一緒に行ってやろうか?クククッ」

「……俺はお前を怒らせたか。すまぬ」



高杉の顔は笑っているのに、桂は悲しそうに謝った。
高杉がふっと真顔になり、次の瞬間桂は乱暴に畳に抑え付けられていた。



「っ、たか…」

「そう、怒ってるぜヅラぁ。よく解ってるじゃねえか」

「、たかす、ぎっ…」



ぐっと力を込めた指が桂の首に食い込む。
桂が苦しそうに呻いた。



「俺と居るとき他の男の名を出されるだけでも殺してやりてぇのに、俺より優先してんじゃねぇ」

「は、お前が言う、とシャレになら、んんっ」



首を絞めたまま無理やり唇を重ねる。
酸素を取り込もうと開いた口に舌を差し込んで好き勝手に口内を犯す。



「ふ、ぁあ」



いつもの甘いだけの声ではなく、苦しげに呻く声も混ざり高杉は口角を上げた。
自分は少し壊れているかもしれない。
桂のこんな声を、顔を感じただけでこんなにも興奮する。




「愛してる、小太郎」




お前を愛してる。






だから今日だけお前を―――
―ぐちゃぐちゃに壊さして―






END


――――――――――――

動乱編を見て以来ずっと書きたかった



ご拝読ありがとうございました。



2008.9.4






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