たなばた
現代パロ
先生⇒静蘭
生徒⇒燕青
七夕って星が綺麗に見えるんだっけ?
そんな燕青の言葉から、7月7日の夜、燕青と静蘭はいかにも星のよく見そうな山にいた。
「おー!すげーすげー!すっげー綺麗!」
「お前の感動詞は『すげー』だけか、馬鹿」
そう言いながらも静蘭も満点の星空に見入っていた。
都会ではまず見られない風景に、綺麗な空気、初夏なのに肌寒さすら感じる気候。
どれも長い間触れていなかった癒しだ。
無意識のうちに燕青にかける口調も穏やかになる。
「明日が休みでよかったな」
「おう!そーゆう点、教師と生徒って楽だよな」
「気楽だな」
いったん会話がと切れ、夜空を見上げる。
やはり空は綺麗で、天気がいいからか、空気がいいからか、天の川がくっきりと見えた。
「あれが天の川…だよな?」
「川に見えるん星の集団だからそうだろ」
「てことは、織姫さんと彦星君はちゃんと会えたってことだな!よかった!」
えらく可愛らしいことを言う燕青を静蘭は横目で一瞥した。
似合わないし、可愛くない。
そんな静蘭の視線に燕青は苦笑した。
似合わないことを言った自覚はある。
「そんな目で見んなって!」
「お前が似合わないことを言うからだ。信じてもないくせに」
「信じちゃいねーけど、話としては可哀想だと思わねえか?」
「…どこが?」
「ちょーっと働かなかったくらいで、恋人との逢瀬が年に1回だぜ?俺なら神様殴り飛ばして静蘭のとこ行くな!」
「働かなくなる方が悪い。私はお前と結婚してもちゃんと働く。それにお前が働かなかったら即離婚だ」
口調は厳しいし、内容はキツいが、静蘭がサラリと言ったお前と結婚という単語に燕青の胸は跳ねた。
男と男、生徒と先生。
壁も障害も多いけれど、こういう瞬間に静蘭に受けいられていると思い知る。
「離婚なんてぜっっってーしねー!」
「ならちゃんと働け」
「がんばる!」
静蘭を幸せにするんだと息巻く姿を見て、静蘭が小さく笑った。
「燕青」
「ん?」
「今日はどこかに泊まるか」
「へ?」
燕青の顔が最高に間抜けな表情を作る。
頭には入ってるけど理解できない。
これは誘われてるのか?
「別に家に帰るならいい。送って行くから車にもど――っ」
「泊まる!」
燕青の反応に、今さら羞恥が来たのか早口でまくしたて足早に車に戻ろうとした静蘭を後ろから思い切り抱きしめる。
たぶんおそらく、いや、絶対に今の燕青の顔はゆるゆるで喜色満面なんて四文字熟語が似合うだろう。
腕の中で静蘭が息を吐くのが分かる。それが仕方ないなって吐息なことも。
「じゃあ今から泊まれる場所を探すからとりあえず山を下りるぞ」
「おう!、でもその前に」
振り向かせた静蘭の唇に数秒間のキス。
「せっかくだから天の川の下で、な」
「関係ないだろ」
「うん。したかっただけ」
ケロっと言い切る燕青に静蘭は今度は見えるようにため息をついた。
やっぱりそれは仕方ないな、というような愛情こもったものだったが。
「いいから、早く来い。置いて行くぞ」
「あ、それは困る」
さりげなく繋がれた手に幸せを感じながら、2人は山の中腹に止めた車へとゆっくりと歩いて行った。
笹の葉さらさら
お星様が見ていた
END
静蘭がいつもよりデレなのは年上の余裕なんです!たぶん!
でも楽しかったです。
2010.7 七夕記念