乗せたあいつと誘ったお前






乗せたあいつと誘ったお前






桜の時期も終わろうかという春先の夜
静蘭は久しぶりに燕青と酒を飲みかわしていた

普段あまり飲まないが、酒は強い方だ

飲む相手がいないだけで




「なあ、静蘭」

「どうした」

「この酒の出どこ、聞いていいか?」



妙にいい酒じゃねえ?


そう尋ねる燕青に不敵な笑みを向けて
知らなくてもいいこともある、と返すと大きくため息をつかれた




「どーせ貢ぎものか、ちょろまかしてきたんだろ」

「どちらにせよお前も飲んだ時点で同罪だ」



久方ぶりの酒のせいか、なんとなくふわふわと機嫌が良い静蘭は悪戯に成功したような笑みを燕青に向ける
無防備な笑顔に毒気を抜かれたような顔をした燕青は、盃を傾けて中身を干した



「まあ、仕方ねえか」



諦めたようにからっと笑った燕青
やはり酒が少し回っているのだろうか

燕青が男前に見える

自分の感情なのになぜか悔しくて、剃れと言っても聞かない不精ひげをぐいっと引っ張った



「いて、何だよ静蘭!」

「べつに」

「理由もなく人の髭を引っ張るなって…」



たいして痛くもないくせに髭をさする燕青をちょっと睨み
次いで髪の毛を引っ張ってみた




「だーかーら!どーしたんだよ?」

「……」

「静蘭?」



絶対酔ってる
静蘭は頭の冷静な部分がそう判断するのを感じたが、行動は止められそうになかった

髪を触っていた手を下におろしていき、燕青の顔をぺたぺたと触る

なぜかそうしたかった
強いて理由を言うとすれば触りたかったからだろうか
燕青が不意議そうな顔で見つめているが、静蘭は止まらない

しばらくして燕青が少し笑いながら尋ねてきた



「楽しいか?」

「…いや、楽しくはない」

「ないのかよ!」




正直に返事した静蘭に燕青は思わず、と言った風に突っ込みそして少し息を吐いた


じゃあ耐えてる俺の頑張りは?


呟くように愚痴られるが知ったことではなかった
本当に、別に楽しい訳ではないから



ただ、こうして触れていると怖いくらいに安心する




「だー、もう無理!怒るなよ静蘭!」




声に出した訳でもないのに、静蘭の気持ちが伝わったように燕青は椅子から立ち上がった
そしてそのまま、切羽詰まった言い方とは裏腹に柔らかく静蘭を抱き寄せた

酒の甘さが残ったそれが触れあったと同時に吸われた




「ん、」




静蘭の反応に気をよくした燕青が、もぞもぞと服に手を突っ込んでいたが
今夜くらいはまあいいかなんて許してしまった





とりあえず、起きたら全て酒と燕青のせいにしておこうと思いながら、静蘭の意識は甘い渦に飲まれていった。









終わり



久し振りに双玉書いたような…
ほろ酔い静蘭

あいつ→酒、お前→燕青

かな?
相変わらずタイトル考えるの苦手です
いっそ「双玉1」とかに…






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