据え膳食わぬは男の恥






※彩雲国イラスト集ネタです
まだご覧になってない方は完全なネタバレになるのでご注意ください







据え膳食わぬは男の恥






目の前の少年、いや、少年に見えるが実際はかなりの年月を生きているのだろうが。
そんなことはどうでもいい。
「コダマくん」と名付けられた少年の言うとおり、試しにタンタンの名を呟くとすぐさま現れた。
目を丸くする静蘭の横で、楸瑛がいかがわしい召喚を行っていたが、静蘭にしてみでばどうでもよい。
酒やら料理やらで騒がしくなりだしたその場を、そっと離れる。



「……」



ふと口を開こうとして、今の時間を考える。
そろそろ就寝に入る時刻だ。
寝た…だろうかと
呼び出そうとしている人物を思い少し躊躇った。
そしてその躊躇いはすぐに霧散する。
別に寝ていても構わない。



「燕青」



数秒の間も開けず、どさっと巨体が落ちてきた。
燕青は驚いた様子できょろきょろとした後に、静蘭の姿を見つけて嬉しそうに笑った。



「おー!静蘭じゃねえかー。……んで、此処どこ?」



まあ、当然の反応だ。
静蘭は今までのことをかいつまんで説明してやった。
すると、コダマが誰でも呼ぶことができると言った、の下りで抑えきれないとでも言うような満面の笑みを浮かべた。
なんだ、と訝し気な眼を向ける静蘭



「だって俺に会いたかったってことだろ?」



そう言われてとっさに反論する。



「違う!…お嬢様も、劉輝も会いたいだろうと思ったんだ」

「じゃあ、なんでこんな皆から離れたところで呼んだんだ?」



ニヤニヤという効果音が似合いそうな笑みを浮かべる燕青に、微かに頬を染める静蘭。
どうも自分は燕青の雄丸出しの表情が、かなり好きらしい。
自分にしか向けない表情だと知っているからなおさらだ。
押し黙った静蘭に、燕青は素直じゃねえなぁとまた笑い、腕を伸ばして抱きしめた。
その腕が払われることはない。



「会いたかっただろ?」

「しつこい」

「たまには素直な言葉も聞きてえな、って」

「……会いたくなければ呼ばない」

「んー、70点だな」

「何がだ」



素直さの点数。
そう言われて腹が立ったので燕青を殴るが、抱き締められたままじゃあまり力も入らない。
それになぜか、燕青は抱きしめるだけで何もしてこない。
別に先を期待しているのではなく、いや、しているのだがそれを認める訳にはいかず、静蘭の中で小さな葛藤が始まる。



「燕青」

「ん?…っ!」



葛藤の末、静蘭は自ら唇を合わせた。
驚く燕青の顔がおかしくて、わずかに笑った後、口付けを深いものへと変える。



「100点だな」



甘い余韻を残しながら唇が離れると、燕青がにやりと笑って言った。
対抗するように、静蘭が艶っぽく微笑み当然だと答えた。
己の魅力をよく知っているからこそできるその仕草に、燕青がかなうわけもなく、噛みつくように静蘭に口付けていた。
燕青を振り回すことが出来て、静蘭はかなり上機嫌で、服の中に手を入れられてもあっさり感受した。



「ん?」



胸元に手を這わせていると、何やら固い感触にぶつかり首をかしげながら燕青がをれを取り出す。



「希代の傑作…か?」

「ああ…それか……劉輝がくれた」

「王様が?」



こくりと頷く静蘭。
大好きな弟からの贈り物にしては多くを語りたがらない静蘭に、燕青が?を浮かべる。



「劉輝が描いた…私だ」

「え?コレ静蘭なのか?!」

「らしいな……」



私の弟なのに…と呟いているところを見ると、結構ショックだったらしい。
まあ、あの王様らしくて可愛いんじゃねえの?
燕青は思うが黙っておく。
それよりも完全に空気を持っていかれてしまった。さすが王様。



「姫さんのも描いたのか?」



この画力で。
そんな含みを込めた燕青の言葉に静蘭は苦笑し、いいや、と首を振った。



「お嬢様には…ご自分のキメキメな絵を渡していた」

「自分かよ!」



つぼに入ったのか、燕青が笑い転げる。
そんなに笑ってやっては可哀想だろうと思うが、確かに笑うしかないのも確かだった。
静蘭は溜息をつきつつ、相手が秀麗でなければ恋の指南くらいしてやるのにち思った。



「あー、腹痛ぇ…」

「笑いすぎだ」

「でもよー…くっ」



なかなか笑い止まない燕青に静蘭が冷たい眼を向ける。
燕青は笑いの余韻を残しながらも、なんとか顔を引き締めた。



「ああ、おかしかった。でもこの記憶も森を出る頃には残ってないんだよな」

「そうらしいな」

「惜しいよなー!」

「何がだ?」

「だって折角静蘭が俺を呼んで、誘ってくれたのに記憶に残らないな、ん…て…」



言いながら燕青の声がだんだんと小さくなる。
そして、まさか、と言って静蘭を見た。



「まさかその上でのあの行動か!?」

「どうだろうな?」



勝ち誇ったようにくすりと笑った静蘭に、燕青はやられたと空を仰ぎ見た。
嬉しくない訳ではないが、なにか悔しい。
そんな燕青に追い討ちをかけるように、静蘭の手が燕青の服にかかった。



「どうせなら最後までしろ」



どうせとか、そんな問題なのか。
わずかに残った燕青の冷静な部分がそう突っ込むが、枝垂れかかってくる静蘭にそんなこともどこかへ押しやられる。
据え膳食わぬはなんとやら、だよな。
内心でそう言い訳しながら、先ほど脱がし損ねた服を手際よく脱がしていった。







END


最近静蘭が妙にツンデレ誘い受けになってます…
この続きは皆様の頭の中で展開して頂けると嬉しいです!






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