ハジマリは失言








ハジマリは失言






その日の静蘭は何かを考えこんでいるようで、ともかく機嫌が悪かった。
秀麗の前では取り繕って普段通りにふるまっているが、その反動か燕青の前では普段以上に酷い反応だった。



「せーらーん。何をそんなに考えこんでんだよ」

「名前を伸ばすな」

「静蘭、どうしたんだよ」



無視
もう1度呼びかけるがやはり無視
だが、静蘭が表立って不機嫌を出しているという事
それは、答えが見つからずむしゃくしゃするその気持ちをどうにかしろという、無意識の内の無言の願いだと知っている燕青はしつこく迫る。
それになんと言っても、不機嫌な顔だろうと自分にしか見せない顔、態度というのはちょっとした優越感だ。
懐が深いのか、ただの馬鹿なのか、燕青にしてみれば静蘭のこういった態度は可愛いものだった。



「言ってみろって」

「…しつこいな、お前」

「静蘭のことだからなー。しつこくもなる、で?何があった?」



ようやく口を開いた静蘭は、燕青の質問に渋面を作るもようやく話しだす。



「私はそんなに男から見て魅力的か?」

「おう」



即答した燕青に静蘭は眉を寄せた



「お前の意見じゃない」

「一般的男性から見て、だろ?魅力的だぜ」



過去の変態から始まり、今日まで続く静蘭の男性からのモテっぷりを知っている燕青は一種の確信をもって言い切る。
恐らく男性から言いよられることが日常茶飯事な静蘭は分からないだろう。
普通の男は大半が男に言いよられるなんてことは体験しない。
燕青だって静蘭に言い寄ってはいるが、言いよられたことは1度たりともない。

どうやら静蘭の不機嫌はここからきているらしい。
ようやく何故自分には男ばっかり寄ってくるのかと疑問に思ったのだろうか。
それならばいい傾向だと燕青は内心喜ぶ。
いい加減、女性ならともかく男性から言いよられるのは阻止したいと思っていたところだ。
しかし静蘭は燕青の答えを聞くとふ、と黙り



「そうか…」


と言い、また少し考えこんだ。
その後顔を上げた静蘭の顔には解決してすっきりしたとでも言うような笑みが浮かんでいる。



「それはいいことを聞いた」

「はい?イイコト?」

「ああ、しつこく言い寄ってくる奴は上手く丸め込んで、貢がしてやる」



ふふっとさも愉快そうに笑う静蘭だが、言ってることもその笑顔もまるで悪女だ。
燕青の顔がひきつる。



「お、お前それは、どーなの?」

「別にいいだろう。あんな眼つきで眺めまわされる慰謝料だと思えば安いものだ」



あんな眼つきというのが気になったが、あえて眼つきというくらいなのだから物理的接触はないことになる。
触れも出来ない相手に今から金を巻き上げられる男たちのことを思うと、ちょっと可哀想。
だが、ぐだぐだ考えても燕青だって静蘭は大事なのだ。
上手くあしらうついでにお金を取るくらい別にいいかと思ってしまった。





そうして静蘭の色香に誘われた哀れな男たちは、今も減ることなく、紅一家の食卓を潤すのに大変貢献している。







END








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