櫂の視線はいつもまっすぐに僕に突き刺さる。
そして僕をその視線で切り裂いて、ぐちゃぐちゃにえぐってくるんです。

櫂に見つめられるとどうしても僕はその視線に殺されてしまう。心臓がばくばくと大きく早く鼓動を打って、どんどんと寿命が縮まっていく。
人間が鼓動を打つ回数はみんな同じで、鼓動が早い人ほど寿命が短くなるというのが本当なら、僕はもうすぐ櫂に殺されてしまう。あの視線に殺されてしまうのだ。
毎日毎日僕の残りの鼓動の回数を遠慮なくえぐりとって減らして行って、どんどん死に近づけてゆく。
櫂はひどいです。

僕が死んでしまうかも知れないのに、今日もあの視線で僕をころしにくる。
あの視線に見つめられると、体が熱くなって、動けなくなる。

「レン」

そうしてまっすぐに僕を見つめて僕の名前を呼ぶ。
その声もまた凶器であり、僕の寿命はまた短くなる。

櫂が手を伸ばし、僕の髪にそっと優しく触れた。
こんなに優しい手つきでも、僕を殺そうとしてるんだからひどい。
心臓がまた加速して、どんどんと死に急ぐ。
ああ、死んでしまう。このままじゃ僕は櫂に殺されて死んでしまう。

「櫂、僕はもう死にそうです」


ぎゅっと、櫂の胸元に抱きつく。
すると、僕の寿命はまた縮まって、櫂に殺されるという感覚がまた濃くなる。

容赦なく送られてくる櫂の上からの視線に体が熱くなって、腕に力を込めると、櫂の鼓動の音が聞こえた。
それはとても心地よい音だったけれど、僕と同じぐらいに早くてすぐに死んでしまいそうで、ふと櫂の顔を見れば頬を赤らめて何だか嬉しそうな顔をして僕を見ていた。その顔かわいいですよ。
でも、多分僕も同じような顔をしているのだと思う。

どんどんと寿命が縮まっていく櫂の音を聞きながら、きっと櫂を殺せるのは僕だけなのだと思うとたまらなく嬉しくなり、櫂と一緒に死ぬのなら幸せかも知れないなぁなんて思った。



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