「櫂はね、僕の事が凄く好きなんですよ」

レンさんは、秘密と言う風に、口の前で人差し指を立てて、そう言った。
唐突に何を、と思ったが、レンさんの後ろ側を見た瞬間に、ああ、と寂しいような苦しいようなどうしようもなく嫌な気持ちに襲われる。

櫂くんが、レンさんの背中にもたれかかって眠っていた。

「うらやましいでしょう?」

にやりと笑い、僕を見る赤い瞳は、何だかとてもきらいだった。
別にレンさんの事は嫌いじゃない。だけど、こうして僕の気持ちを見透かしたようにぶつけられる『自慢』は、そりゃあ羨ましいし、悔しいし、苦しくって、その時の勝ち誇ったように細められる目が本当に本当にきらいだった。

あの目を見ないように、とただすやすやと眠る櫂くんをレンさんの肩越しに眺めていたら、レンさんはふふふと笑い、「あげませんよ」と呟いた。


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