「そーいやお前って絵ヘタクソだったよな」

櫂が小学生の頃に描いていた絵をふと思い出して、懐かしい気持ちになる。
得意気に見せられた、自分のデッキのユニットを描いたという絵は、正直何が何だかわからなかった。逆に芸術性があるのかも知れないと思うくらい、よく分からない何かだった。
最後に櫂の絵を見た記憶がその時だから、もしかすると子どもだからそんなだっただけで、今はすげえ上手いのかも知れない。
だけど、選択授業で美術じゃなく書道を選んでるくらいだから、やっぱり絵は苦手なのだろうか。

「…………」

じとっとした目で軽く睨みつけられる。
あーこれ絶対まだヘタクソだわ。しかもわりと気にしてる。

「なー櫂、俺に年賀状描いてくれよ。手書きで」

にやにやしながら言えば、櫂は嫌そうに顔を歪めて「めんどくさいから嫌だ」と言う。

「えーなんで!年賀状くれよ!心がこもった櫂からの年賀状ほしい!!」

「しつこいぞ」

雑誌に目を向けたまま、冷たくあしらわれる。
いいじゃん一枚ぐらい描いてくれたって。
ケチ!と声を張り上げて言えば、櫂はゆっくりとこっちを向いた。

「だいたい、どうせうちで年を越すんだから、わざわざ年賀状なんていらないだろう」

まっすぐな緑の目に見つめられ、そう言われると、思わず頬が緩む。
やばい、うれしい。

「なににやけてるんだ気持ち悪い」

「だーって!櫂と年越し一緒とか、なんかやっぱすげえ嬉しいなと思って……!」

へへへと笑えば、櫂も分かりにくくほんの少しだけ微笑んで「そうか」と呟いた。


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -