掃き溜めログ




櫂はうつらうつらととても眠そうに座っていた。

「櫂、寝るの?」

「……ねむい」

もうそんな時間かと思い時計を見れば、確かにいつも櫂が寝る時間は過ぎていた。
櫂は、膝を抱えて座り、うぅと小さく唸りながら、顔を伏せる。

「ほら、寝るならベッドで寝なよ」

櫂を抱き上げようと背中に腕を回しても、櫂は身をよじって逃げようとする。
ああもう、暴れるなって。
なんとかベッドまで運び、とりあえず靴下を脱がしていると、櫂は本当に眠そうにとろんとした目で「ジュン」と僕の名前を呼ぶ。

「ほら、お前メイクも落としてないじゃないか。せっかく綺麗な肌してるんだから、ちゃんとしなよ」

「……ねむい」

「まったく……」

立ち上がり、洗面台へと向かう。
とりあえずお湯でタオルを濡らし、コットンと化粧水、櫂が泊まりに来たときに使う用のメイク落としを持って櫂の所へ戻る。

「ほら櫂、じっとしてて」

今にも寝そうな櫂は、眉間に皺を寄せながらもおとなしくしていた。
丁寧にメイクを落とし、タオルで優しく顔を拭いてやる。そして化粧水のついでに頬を撫でてやれば気持ち良さそうにまた目を細めた。

「これは甘えられてるって事でいいのかな」

返事はない。
いつもなら、嫌そうに睨み付けてくるだろうに。これは相当限界らしい。
壁際に寄って、軽くシーツを掴んでいる櫂は、メイクをしていないからか幼く見えた。

「……あー櫂、そのまま寝たら制服皺になるよ」

「んぅ……」

とりあえずブレザーとスカートを脱がしてハンガーにかけておく。
最後にとカッターシャツのボタンを一つずつはずしていると、櫂はうっすらと目を開けて、寝ぼけ半分に「へんたい」と呟いた。

「よくいうね……」

人の優しさを何だと思ってるんだお前は。
下着姿になった櫂は、無防備にすやすやと眠っていた。
それはそれは襲おうなんて気持ちにならないくらい、安心した顔で眠っていた。

「……かわいいね」

起こさないように優しく、梳くように髪を撫でてやる。すると、一瞬だけふにゃりと微笑んだような気がした。
何だか幸せな気分になって、櫂の髪を撫でながら、僕も眠りについた。




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