まとまらなくて意味不明になった。 それは中学生の頃の話。 休み時間、教室の窓からぼんやりと空を眺めていたら、何となく今なら空を飛べるような気がして、僕は両手を広げて窓から飛び降りた。 後ろから聞こえるクラスメートの悲鳴。 二階といえど意外に高いなぁこれはもしかしたら死ぬかもしれないどうしようか、なんて考えながら、さかさまの風景を見る。 すると、視界の端っこにちらりと大好きな見慣れた色が見えて、ばさばさと鬱陶しい髪の毛の間からそちらを見れば、櫂が物凄く驚いた顔で僕を見上げていた。 そんなところで何してるんですか、櫂。 口を開こうとした途端に、僕は櫂にぶつかった。 後から知った話、遅刻してきた櫂は偶然そこを歩いていたらしい。 櫂をクッションにした僕はほとんど無傷だったけど、腕を押さえて顔を歪める櫂は泣きそうになりながら必死なほどに僕の心配をしてくれた。 結局怪我は軽かったものの、もしも腕が使えなくなったら、ヴァンガードが出来なくなってしまうのに。もしかしたら、大好きなカードが二度と握れなくなるかも知れないのに。 それでも櫂は僕の心配をして「レンが生きていてよかった」と言った。 その時僕は思った。 ああ、これは僕のものなんだ、って。 頭のネジが足りてなくって、まわりのみんなと違っていて、世の中でとても生き辛い性格をした僕の為に、神様がくれたプレゼント。だから、櫂は僕のものなんだ。 僕が生きる為の、櫂なんだ。 ずっとずっと、そう思っていた。 だけどそれは違った。 「櫂くんは、僕に希望を与えてくれたんです」 アイチくんは、小さく微笑んで、櫂との昔話をしてくれた。 その話を聞くと、アイチくんもまた、世の中で生き辛い性格をしていた。 そして、櫂はまるでアイチくんの為に存在しているように聞こえた。 僕はその時に気付いてしまったのだ。 いつの間にか僕のまわりには人が沢山いて、それはアイチくんも同じ。 そして、その始まりやきっかけは櫂。 櫂は、僕の為に神様がくれたプレゼントじゃない。 僕やアイチくんのような生き辛い人の為の、櫂。 「櫂はまるで神様の使いの天使様みたいですね、ふふっ」 にっこり笑って呟けば、アイチくんは首を傾げて『この人また変な事言い出したな』みたいな苦笑いを浮かべていた。 別にわからないならそれでいい。 「僕は神様になりたいです」 僕たちなんかよりもずっと生き辛い性格をした櫂の為に。 |