よくわからない上に短い 櫂はよく、一点を真っ直ぐに見つめてただハサミをカシャカシャと動かし、何もない空中を切っていた。 俺にはよく意味が分からなかったが、何となく、そうしてる時の櫂の表情は悲しげに思えた。 ある日、忘れ物を取りに放課後誰も居ないであろう教室へ行くと、真っ赤な夕日が差し込む窓際の席でまた櫂がハサミをカシャカシャと動かし、何かを切っていた。 いつも通りにぼんやりとそれを眺める。相変わらずの不思議な行動だ。 暫く黙ってただ見ていると、ふと何かがきらきらと夕日に反射しているのが見えた。 わかったのは、櫂が、それを切ろうとしている事。 いつもは見えないそれは、よく見てみると糸のようだった。 櫂の、小指から伸びる、真っ赤な糸。櫂はとても悲しそうな顔でその糸を切ろうとする。 しかし、一向に切れる気配はなく、糸は相変わらず綺麗にぴんと張られていた。まるで、櫂の行動は無駄だと言わんばかりに。 俺はただ少し泣きそうになりながら、ハサミで切れない糸をもう一度じっと眺める。 その糸は、俺と反対側の窓の外へと真っ直ぐに、遠くに伸びていた。 |