※櫂くん料理できるとか分かる前に書いたので色々おかしい。 来週の月曜日は学校の創立記念日で休み。そして火曜日も祝日で休み。 要するに今週末から、俺達は4連休というわけだ。 一見4連休だ!やったあ休みだ!と喜ばしい事に思えるが、いきなり4日も休みだとなれば、実際暇で暇で仕方ない。 せめてもう少し早く教えてくれよ先生。そしたらどっか遊びに行く予定も立てれたのに。 「予定を調べてないのがまずおかしい」 明日から4日間にわたる暇を嘆く俺に、櫂は冷たく言い放つ。 教室には俺と櫂の2人だけ。みんな明日からの休みに大喜びで帰って行った。きっと遊び尽くした連休なんだろう。ああ羨ましい。 櫂は俺を無視して日直日誌を黙々と書いていた。内容は「眠かった」だの「だるかった」だのしか書いてないけど。 「俺4日間もどーすんだよ……。暇過ぎて死ぬ。しかも今親が2人ともなんか仕事でどっか遠く行っててまじで俺一人だし……。なー櫂、どっか近くでもいいから遊びに行こうぜ」 「面倒くさい」 言うと思った。だって櫂だもんな。 きっと櫂の事だから俺と違って暇でも死にそうにはならないんだろう。 「櫂、俺寂しい」 「知らん」櫂はシャーペンに芯を入れている。その手付きが何となく不器用に見えて、少し微笑ましい気持ちになる。 「あ、わかった」 「今度は何だ」 カチカチとシャーペンを押しながら櫂はこっちも見ずに呆れ気味に返事をする。 「櫂、俺ん家泊まりに来いよ」 3泊ぐらい。 そう言うと、櫂は顔を上げ眉間に皺を寄せて、一言「面倒くさい」と言う。 「わかった。じゃあ3日間三食と、あとおやつ付き!」 これでどうだ!と櫂を指さす。 櫂が毎日ろくな飯を食ってないのは、昼飯を見ればわかる。それに、櫂と違って俺は一応料理ができる。櫂もそれを知っている。これなら釣れる筈だ。 どうだ、櫂! 「……まあ、それなら…別に……」 よし!釣れた! 「じゃあ決まりな!」 思わず笑みがこぼれる。 櫂が明日から俺の家に泊まりにくる。 とりあえず今日は帰って部屋の掃除をしなければ。 何となく、さっきまで嫌でしかなかった4連休が最高のものに思えた。 *** ピンポーン 家のチャイムが鳴る。 俺は走って玄関まで向かい、勢いよく扉を開ける。 「いらっしゃい!」 「ああ」 櫂は必要最低限の服だけ、もしくはあってもカードぐらいしか持ってきてないであろう適度なサイズの鞄をさげて、立っていた。 しかし櫂の私服なんて久しぶりに見た。 「まあ上がれよ!」 どうぞどうぞと昨夜から必死に片付けた家の中へと櫂を招き入れる。 とりあえず飯とおやつが条件だった事を思い出し「なんか食ってきた?」と問えば、櫂は首を横に振った。 「んじゃあ飯つくるわ」 1日目は何となく櫂に精一杯におもてなしをして、ゲームをしていたら、いつの間にか2人とも眠っていたらしく、普通に時間が過ぎていった。 「……」 2日目にして、俺達はやる事がなくなった。 窓の外の鳥がうるさく感じる程に部屋の中は静かだ。 俺はゲームの雑誌を読んでいて、櫂は無表情で漫画を読んでいる。それ一応ギャグ漫画なんだからちょっとは笑えよな。なんて櫂をちらちらと観察する。 不思議と居心地は良くて、あまり暇とも感じなかった。 櫂の寝転んでいるベッドに俺も座る。 そしてそのまま倒れ込んで、櫂の背中を枕に寝転んでみる。 「三和、重い」 「なぁーんか櫂って猫っぽいよなぁ」 言いながらわしゃわしゃと櫂の頭を撫でると、櫂は体をよじって手を避ける。 「やめろ」 その反応超猫っぽい。 そんな櫂が可愛くて思わず顔が綻ぶ。 だって今だって友達が家に泊まりに来たって感じしねぇもん。 「俺さ、昔猫飼ってたんだよ」 小学生低学年ぐらいん時に。 そう言うと、櫂は話を聞いてくれる気になったのか、ため息をつきながらも漫画を閉じて、体勢はそのままに俺の方へと振り向いた。 「けっこう可愛がって、俺にも懐いてた筈なんだけど、結局どっか行って帰って来なかったんだ」 まだ子猫だったから、どこかで事故にあったのかもな。可愛いやつだったのに。 そう言えば、櫂は微妙な顔で、俺をじっと見つめる。 確かに微妙な事を言っている自覚はあるが、そんな顔で見られても困る。 「やっぱなんか、櫂って猫っぽいからさ、あいつが帰って来たみたいだ」 元気だったか〜と頭をまたぐしゃぐしゃと撫でれば、櫂は眉間に皺を寄せて「腹が減った」と呟いた。 「おお、もうこんな時間か。飯作るわ」 一人キッチンへと足を進めながら、そういえば昔飼っていた猫の毛色と櫂の髪色がどことなく似ている気がする、とあの猫の事を思い出す。 やっぱり友達が泊まりに来たというよりも、ペットを飼ってるみたいなんだよなぁと、思わず誰も居ない廊下で一人吹き出した。 |