好きな子は男だろうが女だろうが食っちまうんだぜ系愛多き男雀ヶ森レン(総攻め)
NAL4イメージ。全体的にただのシモネタ。






ああ、こいつは殺さなければいけない。

漠然とそう思った瞬間、体が勝手に動いた。




ぼろぼろとみっともなく大量の涙をこぼしながら頬を押さえているレンは、涙のせいで長い髪が顔にへばりつき、尚みっともない姿になっているというのに、そこにまた追い討ちをかけるように情けない震え声で「ひどいじゃないですかぁ」などとほざきやがった。
何なんだお前は本当にいい加減にしろ。
口を開けば怒鳴りつけてしまいそうなギリギリの状態でレンを睨みつける。
その途端に聞こえてくる全速力の足音は走りにくいであろうヒールの音で、案の定青髪の女が凄い形相で駆けつけてきた。


「レン様になんて事するのよ!!」

そう絶叫する女は、レンを庇うように抱きしめて、まるで人外を見るような軽蔑の目で俺を見てくる。



「俺の姿を見てもそいつの方が可哀想だと思えるのかお前は」

今の俺の姿は着ているシャツのボタンが引きちぎられて前が全開になっていて、上着も肩からずれ、ベルトが抜き取られ、手はえらく可愛らしい色をした趣味の悪い手錠がかけられているという情けない姿だった。
ズボンに手をかけられた所でなんとか止められたからよかったものの、あのままだと確実にやられていた。

「でも、だからってヒジで殴るのはひどいですよぉ」

えぐえぐと泣きながらレンはアサカにすがりつく。だからなんで俺が悪いみたいになってるんだ。

「お前がこんなものつけるから肘でしか殴れなかっただけだろう」

腕を持ち上げて見せるとじゃら、と鎖の音がする。
薄い桃色をしたその手錠は、何となくアダルトグッズの類なのだろうと見て分かり、こんな物を買うやつの神経を疑う。

「なによ!レン様が悪いって言うの!?だいたいあんたピンク似合わないのよ、ピンクが可哀想!」

相当俺に腹が立っているらしく、わけの分からない難癖までつけられはじめる。
こんなもの似合ってたまるか。

「犯されそうになったんだぞ。正当防衛だ」

「レン様が抱いてくださるというのに、嫌だって言うの」

信じられない!とアサカはまた絶叫する。
女のかん高い声は耳が痛くなるからやめてほしい。

「レン様!こんなやつやめて、私としましょう!ねっそうしましょう?」

頬を赤らめ、少女のような顔をして言うが、内容は露骨過ぎて可愛らしさの欠片もない。
レンは少し悩むようにしてから、申し訳なさそうに「ごめんなさい」と呟く。途端にアサカはこの世の終わりかというぐらいの絶望的な表情になる。

「アサカとは昨日したから今日は櫂としたいです」

あっけらかんと言い放たれる。その断り方はどうなんだ。しかも昨日もしたなら今日はしなくていいだろう。お前の性欲は底なしか。
というか知り合い同士の情交の話なんて出来る限り知りたくもないからやめてほしい。そういえば昨日2人の姿を見ない時間があった事を思い出す。またどこかでケーキでも食べているのだと思っていたが、つまりはその時にしていたという事だろう。

「俺はしないぞ」

もう一度断りの言葉を呟けば、アサカが酷い嫉妬の目で俺を睨みつける。まさにアサシンと言えるその目に、少しだけ怯んでしまったが、とにかく俺はしたくないんだと睨み返す。

「それに、俺がしなくても相手はいくらでも居るだろう」

FFなんて殆どレンを教祖とした宗教のようなものだ。そこに所属する奴なんてレンが一言声をかければ、喜んでついて行くような者が殆どだろう。別に俺が相手をしなくても、アサカのようにレンに恋い焦がれる者は沢山居るのだから、そいつらの相手をしてやればいい。

「でも今日こそは櫂とえっちしたいんです」

櫂ってば僕としてくれないから、寂しいんです。
しょんぼりと頭をうなだれているレンの言葉に、アサカは意外だという顔で驚いていた。

「あんた、レン様に抱いて頂いた事ないの?」

「いや……無い訳じゃあないが……」

中学時代に一度、無理やりされた事がある。あれは本当に抱かれたなんてものじゃなく、犯されたという言葉が正しい。
思い出しただけで気分が悪くなる。口元を押さえようとしたが、手錠が邪魔でうまく出来なかった。クソ、早くこれを外せ。そして着替えさせろ。

「あの時の櫂、可愛かったですよぉ。すっごく嫌がってていっぱい涙を流してて、何か、辛そうでかわいそうでした。まあそこが良かったんですけど」

「おかげで見事にトラウマだ」

本当に最悪でしかない。
というよりかわいそうだと思ったなら止めて欲しかった。
アサカは俺を相変わらず睨みながら「全然トラウマ持ちの言葉には聞こえないわよ」と冷たく言い放つ。しかし次の瞬間、レンの方へと振り返った時にはまた少女のような柔らかい顔で笑みを浮かべていた。

「じゃあ、最近は櫂とはなさってないのですか?」

妙に嬉しそうに甘ったるい声でアサカは問う。
自分の一番好きな男が、自分以外を男女問わずに抱いているというだけでも微妙なんだ。せめてもに一番嫌いな男を抱いていないという事に希望をかけているのだろう。
しかし残念ながらそのアサカの希望も正直微妙な所だ。俺も残念だ。

「ああ、いえ、いれさせてはくれませんが、ずっとごねていれば最終的には手と口ではやってくれますよ」

「何あんたピンサロ嬢?」

淡い期待も破られて、ここ一番の眼光で睨みつけてくる。
そして遂にレンに求められるのが如何に有り難い事なのかをべらべらと語り始める。
悪いが全く有り難いとは思わないし、抱かれるやつが羨ましくもない。

「レン様がお誘い下さっているのに断るなんておかしいのよ、わかった!?」

「分からないし分かりたくもない。第一お前に突っ込んだものが俺にも突っ込まれるなんて絶対にごめんだ」

「その言葉そっくりそのまま返すわよ!!!」

ギリギリと殺意を持った目で見られる。やはり知人同士のそういう話はできるだけ聞きたくないものだと思う。今度からは手や口でするにもアサカや信者達の顔が思い出されそうで嫌になる。次からはせめて拭くものだけでも用意させよう。そうしよう。

「とにかく、俺はしない」

「私は毎日でも何回でもお相手させて頂きたいのに、あんたわがままよ!!」

ぎゃあぎゃあと言い合いをしていれば、レンがわざとらしく「困りましたね」と呟き、俺とアサカの肩を叩く。
そしてどや顔で言い放った。

「今日は3人でしましょうか?」

「断る!!!!」
「嫌です!!!!」

全力で拒否する俺とアサカに、レンは「もう、2人ともわがままですよぉ!」なんて言う。

やはりこいつは殺すべきだと、本気で思った。







雀ヶ森ごめん。
もし櫂くんが鳴海呼びだったらなおします。

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