手を握って、空を見た。幾千幾万の星が散らばっている。
星を見たいと言ったのは彼だった。
今日は天気がいいことも相まって、星がいつもよりよく見える。星たちは必死にまたたき呼吸をしている。不可思議な空間。ちりばめた星屑をすべて瞳に収めようと躍起になる。

チラと彼を見る。彼は空を見る。
瞳に灯る宇宙に僕は吸い込まれた。彼は星空を綺麗だと言うけれど、彼の瞳のほうがずっと綺麗だと思う。彼と星を線で繋いだ。少しだけ、星が近くなった気がした。

「キミは空が似合うよね」
「綾時は月か太陽だな」

君に包まれているなら本望です。
きゅと手を握ると握り返されて、くちびるは三日月を描く。
夜空に同化しそうなほどの紺青の髪が風に揺れて世界に流れる。

「帰るか」

どのくらいそうしていたかわからない。ふと彼が視線を僕に移して呟いた。
星明かりで淡い世界にぽつり、ふたり。

「エスコートしますよ、お姫様」
「遠慮します、王子様」

握った手はするりと抜けて、指先は数歩先の宇宙へ。

「どこ行くの」
「空にでも」
「僕も行く!」
「行き先変更。綾時のとこ!」

群青の夜に2人分の笑い声が鳴り響く。
声は幾千幾万の気体となって星空に吸い込まれていった。


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