どうしてこうなったという理由をいろいろと省くのは大人の事情という奴なのだが、まぁ、大変なことになった。

「君、今女の子でしょう」
「あぁ」

女になったという避けようのない事実。現実から逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
朝目が覚めたら女になっていたなどと脳天が痛くなるようなありえない出来事が、今この瞬間我が身に降りかかっている。なんということだ。僕はもはや諦めのため息を吐くしかなかった。

「ね、僕も女の子になっちゃったよ」
「見たらわかる」

女へと変貌を遂げた自分と同じように、目前にはエキゾチック系の美人がいた。
自分とほぼ同一であるのだから、彼もまた変化したのだろう。道連れだと醜く心が笑うのは、だってしょうがないではないか。
泣きボクロと少し垂れた目、顔の造形はさほど変わってはおらず、眼前の女は望月綾時であると言えば望月綾時である。
しかしそれはじっくり見た場合であって、一目見ただけはわかるまい。とても、とても美人であった。憎たらしいほどに。
そんな綾時は俺をかわいいかわいいと言いながら撫で回す。いつも以上にスキンシップが激しくてどうしていいかわからない。

「おいやめろ」
「いいじゃない。女の子たちってよく抱きついたりしてるし」

シレッと言いながら更にぎゅうぎゅうと俺を抱きしめる。女子体型でも一回り大きな綾時を恨めしく思った。
もし自分が男のままだったら…と考えたが、彼女より小さい彼氏という忌避したい想像が頭をよぎったため、以降その件に関しては脳内から抹消した。
そしてもう一つ不満を付け足すならば、それはデカいゴム鞠があたっていることだ。むにゅう、と弾力のある肉塊はまさしく健全男児たちが追い求めている其れに間違いはない。しかし今は女の身であるためかまったく欲情しなかった。それよりこんなに圧迫して大丈夫なのかと違った論点の思考さえも出てくる。まだ女に染まりきっていないと思いたいがどうにも視点が変わっている。危ない。俺はあくまでも男としていたい。しかしながら、腑に落ちないものは落ちない。

「不公平だ」
「え?なに?」
「お前散々俺からいろんなの取ったとかごめんねとかほざいてんのに、胸まで持ってくのか」

ぐいと引き剥がして綾時の姿を上から下まで改めて見直した。
順平あたりが見たら確実に鼻の下を伸ばしながら気持ち悪い動きをするに違いない、見事なプロポーション。くやしいくらいにスレンダー、かつナイスなボディ。
俺だってなぁと真下を見たが、綾時と比べたら見事に平らである。どんなに目を凝らしても、無いものは無かった。綾時を反転したかのごとく貧相な体つき。男のステイタスであるはずの背も足りてなかったのに、女のステイタス・胸まで無いなんて悲しむなというほうがおかしい。

「俺って、女としても魅力ゼロなのか…そういうことか…」
「そ、そんなことないよ!男の子の君もそりゃ素敵だったけどさ!今だってちっちゃくて、かわいくて」

ドスドスと痛いところに言葉が刺さる。しょげかえる俺をフォローしたつもりだったのだろうが残念ながらその効力はマイナスに働いた。もはや言葉の暴力だ。
俺はでっかいとかかっこいいとか言われたいんだよ。あぁでも今は女か。
綾時がこっちを見ながらものすごく顔を赤らめているのが余計に不愉快極まりない。僕が男だったら押し倒してると末恐ろしいことを言っていた。洒落にならないからやめてほしい。

「あ、そっか」

と、突然綾時の両腕が胸元に伸びきた。かと思えば、次の瞬間には自分の胸が掴まれていた。

「うぎゃぁ!?」
「揉んだら大きくなるよ!」
「はぁ!?」

胸が揉みしだかれて変な気分になる。美人が残念な女子にセクハラしてるという図が出来上がるのだがなんだこれ。この野郎ふざけんなと罵倒したが、身体的優位の軍配は綾時にあがった。
時折変貌する獣の目は女でも健在なようだ。身の危険を感じてならない。
なんだかんだで、互いの関係が男の時とさして変わりのないことに悔しさも覚える。
はやく自分だけ元に戻れと諦め半分に願った。




(「B…いや、Aかな?」
「ふざけんな!Cだ!」)









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李々様リクエスト、女体化綾主でした。
お待たせしてすみませんでした…!
先天性か後天性か迷ったのですが、わたしが後天性が好きなのでそっちに。
教えて君のABC☆みたいな内容になってしまってどうしようという感じではありますが…!身体的話題になるのは不可抗力というか…!
百合百合しい綾主が大好きなので楽しんで書かせていただきました。

リクありがとうございました!

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