「ばんざーい、ってやって?」
「は?」

おしゃべりな綾時の口は沈黙を欲しない。会話が途切れたからってそれはないだろう、と思う。沈黙になろうと嫌な沈黙ではないなら別に構わないのだが、綾時はそうでもないらしい。
しかしベッドの上の男同士の会話が万歳とはこれいかに。

「ほら、はやくはやく。ばんざーい」
「なんだよ……………あーはいはい、ばんざー…!!?」

子供のような純粋な瞳で見られて(あんな目されたら断れるわけないじゃないか)、両腕をあげて、途端、バッと、目にも止まらぬ早業で。
服を脱がされた。

「はい、脱皮〜」
「ばっ、おま、なに、」
「緩めのシャツっていいね!すごく脱がせやすい!」
「そういう問題じゃない!」
このばかやろう!

心の中で舌打ちをして悪態をつく。綾時の行動は脈絡が無さ過ぎる。予測不能。射程外で想像は行動を開始する。
加えてこの時期に何の前触れも無しに脱がされるというのは少々酷だ。撫でる空気に敏感になる。寒い。

「だって君、全然その気ないし?じゃあもう強行手段で脱がせちゃおうと思って」
「バカだ。お前バカだ」

こんな技どこで覚えてきたのか。たぶん順平かそこらだろうが。
やめろと言っても聞きそうにない。スイッチの入った綾時はもうどうしようもないのだ。あんな罠に引っかかった自分が悔しい。
優しく、けれど抵抗を許さない強さで押し倒された。

「いい?」

灯り始めた獣の目が自分を射ようとしていた。
残念ながら流されるつもりはさらさらない。

「ダメ」
「そんな!?」

拒否した途端に悲しそうな目をするものだから、浮上した罪悪感に気を削がれる。まるで自分が悪いみたいではないか。
冗談じゃない。けれど悲しむ綾時を見るのもできるなら避けたい。
僅かに思案した後、ぐっと抱きしめて引き寄せると、一緒にベッドに沈みこんだ。

「うぇ!?」
「一緒に寝るくらいなら許す」

結果的に一番妥当で自分も満足できる方法に逃げ込んだ。
綾時が上にいるのはいろいろと不都合なため、抱きしめたままごろんと転がり綾時を下にして寝ることにした。綾時は何も言わず、けれど驚いた目で自分を見ていた。

「綾時」
「は、はい」
「ぎゅーってやれ」
「えっ。う、うん」

本当にぎゅーっと自分を抱きしめる綾時がおかしくて少しくすぐったい。綾時の手が直接肌に触れているのを感じて、なんとなく上半身裸でよかったと思う。今はもう暖かい。
心臓に耳を傾ける。聞き慣れた心音に、ゆったりと眠れる気がした。

「そのまま。起きるまでそうしてろ」
「えぇぇ!?」

下から無理、もたないよと呻かれたけど、笑ってごまかした。

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