朝から降る雨がやけに嘘臭く感じる。
ざぁざぁざぁざぁ。うるさいうるさい。
昨日のすがすがしいまでの晴天に相まって余計にじとじとじめじめ感は倍増され、機械の身にもかかわらず不快指数は上昇する。

ロマンチストな詩人は、雨を「空の涙だ」と言った。なら今世界は泣いているのだろうか。
アナタも悲しいの。少年の命を使って生き延びたアナタも悲しんでいるの。
私は窓の外の雨粒に映る灰色の世界を一瞥した。止む気配のない雨は肯定のように思えた。

ならばなぜ何もしなかった。見ていたのなら、泣くくらいなら、運命のひとつでもねじ曲げて彼をつなぎ止めようとは思わなかったのか。アナタは何をしてあげた。もう遅いの。ふざけないで。その偽善的涙を早く止めて。
彼に希望を託して、彼に守られて、彼が死んでようやく彼のために泣くというのか。

手を握りしめるとキシキシと嫌な音がする。
何もできなかったと何もしなかったとのわずかな差異で自分を優位に立たせてみても、結局のところ少年が死んだ事実は変わらない。自己嫌悪したとて世界が泣いたとてもう帰ってはこないのだ。私の支えは消えた。足元は崩壊を始めもはや立つことすらおぼつかない。虚無感に何もかも吸い込まれて、最後に残ったのは彼が愛した世界を憎むことだった。

雨音がうるさい。少年の手では拭えないほどの涙を流す空を恨めしく思う。
この世界は少年に対して何もしていない。恩は仇で返された。薄情な世界。少年はそれでも好きだと言うのだろう。お人好しな優しさ。そんな彼も私は愛していた。
彼は綺麗だと言っていたけれど、今の私にはどれも濁って見える。彼が好きだと言ったから、私も好きになれたというのに。こんなにも醜い世界のどこがいいというの。貴方を犠牲にした世界をどう好きになれというの。

ぽつりと雫が落ちて、今少年のためにできることは涙を流すくらいだと気がついた。残念なことに、私と大嫌いな世界との間に違いなどない。彼を救えなかった時点で同罪。けれど私は世界が憎い。
私は今日、世界が少年の愛を甘受していただけで今までろくすっぽ少年を愛していなかったことを知った。やっと流した涙を少年が知ることはない。だのに彼に無条件で愛されていた世界が憎かっただけなのだ。
滑稽なほど受け身な世界。お前の涙は遅すぎる。

返して。彼を返して。私のすべてを返せ。
私はお前が大嫌いだ。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -