僕の未来の話をしよう。
僕はきっと夢から覚める。
目が覚めたら君の隣で寝てるのにびっくりして。すごくうなされているだろうから、君は「どうした」って言いながら優しく抱きしめてくれて。それで僕は「あぁ、夢だったんだ」って安心する。起きたらきっと泣いてしまうだろうから、子どもをあやすみたいに「大丈夫だよ」ってキスまでしてもらって。ふふ、すごく嬉しい。
僕の未来の話をしよう。
そうだね、たぶん君と旅行をしてる。
修学旅行に行ったとき、君は他にもいいところがたくさんあるって教えてくれたから。
一緒に旅行して、おいしいものを食べて、次はあそこに行こうってどんどん新しい予定をたてていく。一つ終わったら、また一つ予定を追加して。途切れない未来。
アイギスさんもついて来るかもしれない。「あなたはダメです」なんて言いながら、僕を蔑んだ目で見るだろう。その手を握って仲良く三人旅。蔑んだ目から冷めた目くらいにはなりたいな。いつかアイギスさんから手を握ってもらうんだ。
旅行じゃないけど、春になったら桜っていう木の下でランチをしよう。お弁当は君の手料理。
順平はたぶん「お前らまたどっか行ったのかよ」って呆れてる。
そんな彼に旅先で見かけた可愛い女の子の自慢話をするんだ。悔しそうな顔が目に浮かぶ。
僕のこれからの話をしよう。
順平たちと馬鹿やったり、アイギスさんに怒られたり、君の隣で1日を過ごして幸せな日々を送ってる。
そんなありきたりで平凡で、どこか刺激的な毎日に僕は笑ってるんだ。
そう、この世界は夢で。
終わりなんて来なくて、僕は宣告者なんかじゃなくて、君たちはペルソナ使いでもなんでもない。きっとそんな。
とても、幸せな。
馬鹿みたい!
そんなことあるわけないのに!
世界は終わる。僕は宣告者で、君たちはペルソナ使い。僕が何度寝ても覚めても変わらなかった。なんて滑稽!でも僕は夢を見るんだ。夢で夢を見て夢に溺れて、泣いて、泣いて。
苦しいんです。辛いんです。もしかしたら、ってまだ思っているんです。起きたら君が抱きしめてくれなくても、キスしてくれなくても、隣で寝ていなくてもいい。君はいつも通りで、僕は君に恋をして。君との幸せな未来を描いてしまうんです。君と生きる世界に焦がれてしまうんです。
そんなもの、永遠に来ないのに。
君もそうでしょう?もういいよ。苦しいなら、忘れればいい。
僕らは同じ夢を見てるだけだ。夢から覚めるには夢の中で一度死ぬのが確実だとは思わない?
死ぬのは恐い?殺すのは恐い?
でも、ね、試してみるのも悪くないじゃない。
どうせ起きたら忘れてる。
ねぇ、だから、
「殺してください」
僕はいつ、夢から覚める。