セーラー服と秘密結社 | ナノ

幻の幽霊車両を追え!5/9   

異界への道を辿る霧深い道路。この視界の悪さで意味を成しているのかは不明だが、この道路にも信号が点在している。赤信号を示し車両がブレーキをかけ停まったその衝撃は幸いにも荷台にまで伝わった。
荷台には、横たわる名前とレオナルド。目を覚ましたのは名前だった。
名前は痛む下顎を押さえながら、上半身を起こす。

「………………?」

薄暗い空間だった。そしてひやりと寒い。目を凝らすと周りは数十体近いパック詰めのようにされている人間。そして隣にはレオナルドが気を失って倒れている。自分の手首には手錠がかけられ思うように身動きが取れない
目覚めたばかりだが、事態の良し悪しぐらいは名前にも判断できた。
現在地は把握出来ないが恐らく事故後にレオと共にどこかに連れ去られたのだろう。微かにエンジンの様な音と移動している感覚もある。取り敢えずクラウス達に連絡を取らねばと名前はポケットに手を伸ばそうとするが、カシャンと音を立ててその動きは遮られた。
両手には手錠。そして手錠から伸びた一本の鎖が車内の壁に取り付けられ思うように動けない。

「………」

名前は隣で気絶しているレオの身体に目立った外傷が無いか確認した。室内に他に誰かがいる気配は無く、ここにはレオと自分の2人だけのようだ。
レオの目尻は僅かに涙で濡れていた。
自分が気絶している間に何か酷く脅されたのかもしれない。そして車内にザップの姿は無い。彼は怪我を負っているにも関わらず身を呈して自分を庇ってくれた。
彼の安否はどうなっているのか。もし警察や救急車が間に合っていなかったら。

「…っ、う」

ふいに名前の目から一筋涙が流れた。
ひと度目の外へ流れてしまえば、他の涙が後を追うように流れ出てくるまでそう時間はかからなかった。
泣いている場合では無いと頭で理解していても、心は言う事を聞かず自責の念に呑み込まれ始める。
声を殺して泣いていると突如左の頬に小さな痛みが生じ、名前は驚いて其方を見た。
左肩には大きな瞳を釣り上げたソニック。彼のか弱い全力で名前の左頬をつねっている。

「ウキッ!」

ソニックは立て続けに小さなその手でぺちぺちぺちと名前の左頬を連続でビンタする。
骨格が軽く脆い音速猿のビンタは全くと言って良い程弱いが、ソニックが敵意からの行動ではないと容易に分かる。
名前は眉間にシワを寄せるソニックとしばし見つめ合い、言葉を持たない彼の喝を理解した。

「〜〜〜ッ!!」

そしていきなりセーラー服の袖で乱暴に目尻を拭う。
彼女の突然の行動に驚いたソニックは反射的に床へ退いた。
名前は涙が止まった事を確認すると、ソニックへ微笑みかける。

「…ありがとう」

ソニックはパチパチとその大きな瞳を瞬かせると、目を細めて親指をグッと立てた。そして毛皮の中から小さな鍵を得意気に取り出す。ソニックは名前の手首に跨がると、鍵穴に器用に鍵を差し込み回し始めた。

「すごい、取ってきたの?」
「キキッ」

ヤハビオが鍵を懐にしまい運転席へ戻る隙を狙い、ソニックは名前の手錠の鍵を掠め取っていたのだ。何度か鍵を回したところでカチャンと音を立て手錠が外れた。

「う…」

その時だった。レオの口から小さなうめき声が漏れた。

「!」
「キキッ」

即座に名前とソニックが反応し、レオのもとへ寄る。名前が小さな声で「レオ」と呼びかけると、彼の瞼がゆっくりと持ち上げられた。
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