(時代いつやねんな話)
旦那が花粉症になったらしい。俺は花粉症じゃないからよく分からないけど、杉に対して体が拒否反応を起こすものだとか。
杉がライバルなのは大将だけじゃないんだ、と俺が笑ったのは内緒ね。
で、旦那は、西洋薬を飲んでだいぶ楽になったみたい。
それでも、目の痒みだけは取れないんだってさ。だから、目薬とかいうヤツを使って、目に液体を落として盾のようなものを作るらしい。
でも、旦那はなかなか盾を作れないでいた。
顔を上に向けて、目をめがけて目薬を落とそうとする。するんだけど、旦那は落ちてくるタイミングに、瞼を閉じてしまう。
上手く刺せぬ、と落ち込む旦那に、俺はアドバイスを送った。
「指で瞼押さえたら?」
「それでも出来ぬ」
旦那は実演してみせた。
液体が落ちてくる瞬間、押さえ込んでいる指の力を上回る力で、瞼が閉じられた。
そんなに嫌なら刺さなければいいのに、と言うと、旦那は、それでは負け戦ではないか、と返してきた。いつから戦になったのさ?
それに、目を掻いて赤くしてる旦那の姿を見ると、どうにかしてあげたくなるのが従者の性ってやつだよね。
色々と案を練っていたら、分かっちゃったよ俺様。
「落ちてくるタイミングが分かるから駄目なんだね。貸して旦那。俺が刺すから」
これ、なかなか名案じゃない?
落ちてくるタイミングさえ分からなければ、閉じるタイミングだって分からない。対策の仕様がない状況を作っちゃえば、液体は目に落ちるしかなくなる。
「あ、ああ」
旦那は了承した。
俺様は旦那の目が開くのを待った。
待ったけど、何故か瞼が開く様子が見られない。
「旦那ー?目開けてもらえる?」
優しく呼びかけると、旦那は小さく肩を揺らした。
「す、すまぬ。目に何か降ってくると思うと…」
うん、何だろうね、この可愛い生き物は。
でも俺様、旦那の事が可愛いからって、旦那の言うことを全部聞く訳じゃないんだよ?
旦那が嫌がっても、旦那の為になることをやるのが俺様。勿論、戦の時は別だけどさ。
はい刺すよー、と呼びかけて、俺様は無理矢理旦那の瞼をこじ開けて、目薬を落とした。
急なことで、旦那は反応が出来なかったみたい。
目薬は無事に、旦那の目に吸収されていった。
「はい旦那、こんどは逆の目ね」
独眼竜と違って、あんたにはもう一個目玉があるんだからね。
もう耐性できちゃったかな?と不安に思いつつ、俺様は逃げ腰の旦那を捕まえて、目薬を構えた。
(おわれ^q^)