「でも、こうやってお話していると、面白いです」
「面白い?」

はい、と彼女はまた笑った。

「最初はただ怖かったですけどね。職業とか生活とか全く分からないですけど、お兄さんは、人を殺すことに抵抗はないんですよね?」
「そうだよ」

そうきっぱりと言い切る彼を見て、彼女は、うーん、と唸って、頭を抱え込むように、自分の両手を頭の両側面に添えた。

「私には、人を殺すなんて到底無理なんで、やっぱり分からないです」
「そっか」
「でも、怖いって感情は、分からないから生まれるんですよね。私は、分からないって感情はなくしたいんです。怖いよりも、知りたい、って感情が勝っちゃうんです」

子どもがそのまま年だけを重ねたような、好奇心の固まり。それが彼女の本質であった。

「研究熱心だね」
「でも、お兄さんのことを知っちゃうと危なそうなので、そこはやめておきます」
「その根拠は?」
「……ジョージさんに、お兄さんのことは深く聞くなって言われたので」

言うか言わないか悩んだ後で、彼女は真実を告げた。先ほど述べたように、嘘は見抜かれる、と判断したためである。

「賢明な指示だね」
「ほんと、一体何者なんですか、お兄さんって」
「お望みなら答えるけど」

彼がそう言った瞬間に、彼女は自分の両耳を手で塞いだ。

「いいです、自分の身の方が大切ですから」

顔を2、3度右左へと往復させて、彼女は真実を拒絶した。

「人には死期があるんだから、怠惰に長く生きたって得はしないと思うけど」
「とにかく、私は死ねないんです。少なくとも、10年くらいは」

彼女を纏うオーラが、少し鋭さを増した。彼女と初めて会ったときも、彼女は死を覚悟した瞬間に、それを回避しようと懸命になっていた。
それは、一般人の持つ「死にたくない」という感情から更に進んだ感情のようだと、クロロは感じていた。


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