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「いいの?何もしなくて」

レストランから出て、けもの道を歩いていたとき、パクノダがそう切り出した。記憶を抜くことも、命を奪うことも、能力を奪うことも、彼は指示しなかった。

「ああ。あの女から、あの男の情報を得る。あの女に、奴らのプロテクトを外させる。又は、あの男と直接接触をする。そのどれかを行うにせよ、あの女は使える。今何かをするよりは、信頼を得て、材料にする方が有益だろう」
「というより、あの子しか方法がないものね。今は」

パクノダの言葉に、クロロはただ頷いた。

「情報を集める必要があるな。しばらく、接触を試みる」
「そうするにしたって、あの子をどこかに置いておかなくていいの?次来たときにはあそこ、もぬけの殻になっているかもしれないわよ」

彼女は彼らの正体を知らないが、監視の3人は、彼らの正体を知っている。彼女を彼らから隔離しようと動いても、何ら不思議ではない。パクノダの発言の意図はそういうものであった。

「俺の考えが正しければ、あの女は、あの場所に居続ける」

しかしクロロは、その可能性はないと言う。パクノダは首を傾げた。

「考えって?」
「監視の連中が、俺たちとあの女を接触させたがっている、ということだ」

そのフレーズは、パクノダの中にあったモヤモヤと結びついた。

「あの二人を回収したとき、あの人が彼女を敢えて残したのは、そのため?」
「だろうな」

ジョージは、彼女という選択肢を、敢えて残した。たしかにそれならば、不自然な状況は、作意的なものへと変貌する。

「何の目的で?」
「そこまではまだ分からない。しかし、これまでの流れは、それを示唆している」

これまでの、あまりに不自然な流れを咀嚼し、クロロが出した結論はこれであった。

「それが当たっていれば、仮に拉致をしても、彼女の保護のために積極的に動いてくるって確証が、なくなるわけね」
「ああ。もしかしたら、あの女を拉致をさせることで、何かを仕掛けるつもりだったのかもしれないな。とにかく、今動くことは、ハイリスクだ」

慎重な彼が出した結論は、一度立ち止まり、自分たちの進路を見定めるというものであった。

「だから、その流れに敢えて反するって事ね」
「ああ」
「それにしても、あの男に執着してるわね、随分と」

そうパクノダが指摘すると、クロロは、目を光らせた。

「あの能力は、盗る」
「だと思った」

あの能力の正体を告げたときの彼の表情は、そう告げていた。パクノダは笑った。

「あの女はどうかはしらないが、賞金首ハンターならば、そうそう死ぬことはないだろう。しばらくはあの能力で遊ぶことが出来る」
「制約次第だけれどね」
「そうだな。何度か、あの能力を理解する必要がある。そのためにも、あの女に幾度か接触をする」
「なら今度は、料理を食べていかないと」

たしかに、レストランに入ったのに、何も注文せずに出てきてしまった。その事実を自覚したクロロは、そうだな、と苦笑した。


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