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いつの間にか開いていた入り口から、二つの固まりが見えている。ああ、駆けつけてきていた何者かの正体が、やっと露わになったようだ。クロロは、その二つの存在を見つめた。

一人は、20代中盤くらいの男性であった。肩に届くくらいの黒髪を、後ろで一つに結いている。体格はさほどよくはなく、身長も170あるかないか、と言うくらい小さなものであった。この人物が、先ほど声を発した人物である。

もう一人は、30代に入ったばかりくらいの男性であった。こちらは体格がよく、身長も180cm以上ある。パクノダよりも少し高いくらいであった。先ほどから一言も話さず、ただクロロたちを睨みつけている。

「どうやら、タイムリミットのようだな」

クロロはそう呟いた。

「セイジさん、コジロウさん」

どうやら、コウとは面識のある人物のようだ。彼女は、二人の名を呼んだ。

「何故、こんなことになってるんですか」

小さな人物の問いに、彼女は首を傾げた。

「知らないよ、そんなの」

彼女の答えに、小さな人物は大きくため息をついた。

「本当に、面倒ごとに巻き込まれるのが好きなんですね、あなたは」

小さな人物がそう言うと、大きな人物は大きく頷いた。彼らとのやり取りで、彼女のオーラが、ようやく緩やかなものとなった。彼女にとって、二人は安心できる人物のようだ。

「すみませんが、彼女に危害を加えるのは止めて頂けますか。彼女はあなたたちにとって、いたぶったり、殺したりする価値などないでしょう。私たちでよければ、お相手を致します」

小さな人物は、クロロを見つめた。彼ら二人のオーラは、彼らの周りで留まっていた。そしてそのオーラの量は、常人と名乗るには無理があるようなものであった。

小さな人物は、一瞬だけ、オーラを膨張させた。その量に、クロロは、ほう、と感嘆した。

「腕に自信があるようだな」
「ええ、まあ。それでは、外でお待ちしています。ああ、コウさんはそこで待っていてくださいね。邪魔なので」

邪魔、というフレーズに不平を持った彼女は、小さな人物を睨みつけた。しかし小さな人物は、彼女に何のアクションも返さずに、入り口のドアを閉めた。

「どうするの?団長」
「こちらに戻って来る様子はないな。仕方がない、伺うとするか。どうせここに居ても、手を合わせることになるだろうしな」
「あの、私は?」
「直ぐに始末して帰ってくる。心配するな」

それが困るんですけど、と言う彼女のフレーズを聞かずに、二人は入り口のドアを押して出ていった。



レストラン内に一人取り残された彼女は、椅子に座ったまま、ぐるぐると思考を巡らせていた。何か行動を起こさなくては、と思うのだが、何をすればいいのかが分からずに居た。

「そうだ。誰かに、知らせなきゃ」

何の確証もなかったが、二人は殺されてしまう、という確信が、彼女にはあった。ここの常連客であり、顔なじみであるあの二人を、助けなくては。しかし、自分には何の力もない。喧嘩を仲裁するのにも一苦労するような私には、何も出来やしない。セイジさんの言ったように、邪魔、なのだ。

彼女は、キッチンに置いてあった携帯電話を手に取った。国家機関に繋がる3桁の番号ではなく、11桁の番号に、彼女は掛けた。ジョージさん、助けて。そう心中で唱えながら、鳴り続けるコール音をただ聞いていた。


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