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クロロとパクノダは、何故、コウのレストランを訪れているのか。何故クロロは、彼女の額に拳銃を突きつけているのか。話は、クロロが、ヒソカとマチの二人に別れを告げた時に遡る。

クロロは、イルミと用事があったと告げてから20分ほど後に、アジトへと戻っていた。

「あれ、団長。忘れ物?」

パソコンをいじっていたシャルナークは、クロロの姿を確認すると、その手を止めた。

「シャル、先ほどヒソカの奴が言っていたコックについて、調べてもらいたい」
「分かった。ええっと、確か、海の方のレストラン、って言ってたよね」

シャルナークは、キーボードを、タンタン、と軽快な音を立てて叩いた。時間が経過するにつれて、彼は表情を堅くしていった。

「ハンターサイトには、そのコックの念については何も書かれてないや。他からも情報がないし。そもそも、そのコック自体の情報があんまりないんだ。名前はコウ・キサラギで、20代のジャポン人ってものだけ。一般人、みたいだね」

ハンターサイトには、膨大な数のデータがある。しかし、データバンクにあった彼女の情報は、少なかった。
彼女のように、小さな島国から来た人間の情報を把握することは、難しい。更にそれが一般人であれば、世の中で目立つような事などはしないため、何か詳しい情報は得にくい。そして、載せておく必要性はない。

それ故、ハンターサイトにある彼女の情報が少ない、というのは、特に不自然な事ではなかった。

「何にせよ、どこかの組織に属している、という可能性はない訳だな」
「そうだね。怪しい人物なら、もっと情報が集まるはずだし」
「そうすると、偶然会った、という話は一応は信じられそうだ。一般人とアイツが接触する機会など、さほどないだろう」

クロロの考察を聞きながら、シャルナークはキーボードを叩き続けていた。

「あ、レストラン・キサラギの場所、出たよ。はい、地図」

シャルナークは、地図をプリントアウトし、それをクロロに渡した。ああ、と言って、クロロはそれを受け取った。ちらりと眺めると、それは海と陸の境界線上にあった。趣味のいい所に作ったものだな、と、クロロは少し興味を引かれた。

「それにしてもさ、ヒソカは何を考えてるんだろうね」

クロロは依然として、地図から視線を外そうとはしなかった。しかし、発言のみは、彼に向けて発した。

「あいつが蜘蛛に入ってから今まで、何も大きな動きはなかった。しかし今、こうして動きを見せている。しかも、世にも珍しい除念師が絡んでいると来れば、ヒソカに何かしらの意図があると考えるのが普通だろう」

クロロの読みは正解であった。現にヒソカは、クロロと二人きりになり、交戦を申し込む機会を狙っている。しかしクロロはまだ、そこまでは推察していなかった。彼にはまだ、ヒソカに関する情報が足りていないのだ。

「団長に忠誠を誓う様子もないのに、蜘蛛にとって利益になる話を持ってくるなんて、胡散臭いよね」

召集しても来ないことばっかりだし。シャルナークのそんな愚痴に、クロロは小さく頷いた。

「最低限の仕事さえすればいいとは思っているが、召集に応じないことは問題だ。一度、あいつについて洗ってみようと思う。そして、何か害が見つかれば、除名をする」
「でも、肝心の除念師さんの情報は、ゼロ。どうする?」
「直接、話を聞いた方が早そうだな。それも、早急に」
「どっちに?」
「幹ではなく枝に決まっているだろう。除念師の方だ」

パクノダ、ついてこい。クロロがそう言うと、彼女は何も聞かずに彼の後ろへとついた。

こうして、二人はこのレストランへとやってきたのだった。


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