入り口である木製のドアを押してみると、扉の上部に付けられた鈴がカランカランと鳴った。
それに反応した店員、もとい店長から、いらっしゃいませ、と愛想のいい声が飛んできた。どうやら、他に客は居ないようだ。

「やぁ、久しぶり。覚えてもらえているかな?」

その容姿を忘れてしまうような人間は、なかなか居ないだろう。彼女は、本音を隠したまま言葉を発した。

「ハンター志望のお客様ですよね。もちろん覚えてますよ」
「そうそう。忘れられてなくてよかったよ」
「そちらのお客様は?」

美少女が、ピエロの横に存在しているのを、コウの目は捕らえていた。

「僕の大切な人なんだ。とびきり美味しいのを頼むよ」
「バカ言うんじゃないよ、ヒソカ」

冷たい口調は、彼の心にグサリと刺さったようだ。彼女は、その光景を微笑ましく見つめていた。しかし、それだけではない。彼女の耳は、新しい情報を捉えていた。

「ハンター志望のお客様は、ヒソカ様、と言うんですか?」
「あれ?言ってなかったかな?」

彼は首を傾げた。

「はい」

確かに、彼女と話したのは一度のみである。交わした情報など数少ないものであっただろう。

「そうか。あ、この子はマチって言うんだ」
「マチ様ですね」
「様呼びはやめてくれ、鳥肌が立つ」

マチは、身震いする仕草を見せた。

「じゃあ、マチさん、でいいですか?」
「ああ」
「僕もさん付けでいいよ」
「では、ヒソカさん、マチさん、こちらの席へどうぞ」

彼女は、2人掛けの机へ二人を案内した。そして彼女は、マチの顔を再び見た。やはり、かなり美少女だ。とても同じ人類とは思えない彼女の容姿に、コウは心拍数をあげていた。しかし、何処か懐かしい気がする。それは、彼女が時代劇に現れそうな格好をしているからだろう。でも、こんな美少女では忍べないだろうな。

そう考えた後で、彼女と彼の接点について、コウは考察を巡らせた。共通点と言えば、彼らから感じられるオーラの異質さであろうか。一般人とは違う、不思議なオーラ。例えるのならば、芸能人を目にした時のような感覚を、彼女は感じていた。

確かに、このピエロの彼も、化粧を落としたら美形なのだろうし、二人とも芸能人でもおかしくはない。しかし、どうもしっくり来ない。もっと異質な存在が、彼らには似合うような気がする。

彼女はそんな事を考えながら、彼らにメニューと水を手渡した。


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