中には、小さなオーラと、大きなオーラの二つが感じられた。

小さなオーラは、間違いなく、先ほど感じたオーラと同質のものだった。
だがしかし、オーラ総量は極めて少ないようだ。

大きなオーラに気を取られていたせいか、この場所に来るまで、このオーラを感じ取ることは困難だった。
それはまるで、親鹿の背で外敵に怯える子鹿のようだった。しかし、何故か一瞬、子鹿は親鹿の背から離れた。だから、自分はこのオーラを見つけたのだ。
その理由を推察しようとするが、あまりにも情報が足りていなかった。


その瞬間だった。

「じゃ、帰るわね」という声と共に、大きなオーラがドアに近づいてくるのを、彼は知覚した。

彼がこのままこの場に居れば、否応なく、絶を使える彼と念能力者が対面することとなる。
オーラをシャットアウトする絶は、オーラをコントロール出来る者、つまりは念能力者のみに出来る技である。見つかれば、彼は念能力者と見なされるしかないのだ。


もし相手が、自分と同じように念能力者との戦いを好む相手であれば、相手に見つかった時点で交戦することとなる。
それはとても好都合な事である。ヒソカの手の朱は、そうして塗り替えられてきたのだから。

しかし、とヒソカは考えた。

もし相手が交戦を拒んだら、どうなるだろうか。

その場合は自分が相手に先制攻撃をしかければよいのだが、
相手がもし、自分よりも逃走に有利な能力を持っていたとしたら、どうなるだろうか。

無論、そうなれば相手はそのまま逃げ切る事が出来る。

しかし、戦いを好まない平和主義者であるのならば、逃げる前に行う事があるだろう。

その後に自分に狙われるであろう、小さなオーラの主の保護である。

すると、考えられる最悪の結末は、こうなる。

興味のある二者が、共に姿を消してしまう。

この結末だけは、避けたい。


そこで、現れてくるもう一つの案がある。


まずは、主と接触をせず、その場をやり過ごすやり方である。

自分のレーダーが反応をしめした対象と、まずは接触をする。
そして、対象のオーラを自分が知覚した理由を突き止めるのだ。

もし対象があまりにもつまらない人間であったのならば、あの大きなオーラの主の情報を無理やり聞き出した後、拉致をすればよい。そして、主をおびき寄せるような手紙を置いておく。

もし、見事に主がおびき寄せられたならば、自分は晴れて交戦することが出来る。仮に警察を呼ばれたとしても、主が来るまで全員始末し続ければ、いつかは折れてやって来るだろう。
そして用が済めば、対象も主と同じように殺せばよい。

この選択の方が、成功率は高いはずだ。

彼は、決断した。

そして、ドアが開く10秒前に、彼は、身を潜める事に成功した。

後は、相手が崖を登り切って暫く経った後に、突入を試みるだけだ。


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