彼女は、帰路へとつく前に、携帯電話を開いた。そして着信履歴の一番上にある名にカーソルを合わせると、通話ボタンを押した。

2度目のコールで、もしもし、という挨拶が耳へと流れてきた。

「ああ、ヒソカさんですか?すみません、少しトラブルがありまして、お届けが少し遅れてしまいそうなんです」

慌ててそう伝えると、彼はいつものように笑った。

「そうなのかい?でも、構わないよ。ちょうど追加注文しようとしてたしねぇ」
「あ、もしかして、マチさんでもいらっしゃったんですか?」
「違うよ。今日は、そうだねぇ……僕の先輩のような人が来たんだ」

言葉を濁すような言い方が少し気になったが、彼女は特に質問をすることなく、返答をした。

「そうなんですか」
「で、君のことを話したら、彼も是非、君の料理を食べたいといい出してね」
「本当ですか?有難うございます」
「だから、ちょうどよかった。これから店の方に向かうよ」
「分かりました。お待ちしてますね」
「うん、彼も楽しみにしているよ」
「では、失礼します」

そうして電源ボタンを押すと、彼女は鼻歌を歌いながら、帰路についた。


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