7月27日の午後。俺たち1軍の選手は、コートへと呼び出された。1軍入れ替え戦が、これから行われるのだ。今年の合宿が始まってから、1軍の選手は一度も負けていない。今日も特に心配はないだろう。そう思っていた。

俺たちが指定された時間にコートへと行くと、そこに居たのは、2軍の1番コートの選手たちと、彼女であった。

彼女は、1番コートの選手と談笑をしている。チクリと胸が痛んだが、彼女のあのときの言葉が、フラッシュバックした。俺たちは、彼女たちの方へと歩きだした。

「全員、揃っているか?」

徳川のその言葉に、1番コートの奴らは、ああ、と答えた。そして徳川は、彼女と目が合った。何から聞けばよいのか。そう徳川が悩んでいる内に、彼女が先に口を開いた。

「1番コートの特命トレーナー、森下茉莉です」
「特命トレーナー?」
「1番コートの選手が、1人でも1軍に勝てるように指導をして下さい。そうコーチたちに指示されたの」

彼女が隠していたのは、このことだったのか。徳川は、瞬時に察した。

「私は戦略を立てられるようなコーチじゃなくて、トレーナー志望だから、勝てるように出来ることってあんまりないなって思ってたの。でも、最善を尽くしたら、選手を万全の状態で練習に送り出すことが出来た。最善の状態で、最大限の収穫を得てきた彼らは、強いよ」

彼女の言葉に、2軍の全員が頷いた。

「俺たちは負けません、誰にも」

彼女が関わっていようが、ただ勝つのみだ。試合の一つ一つに手を抜くことなど、出来ない。徳川は、2軍の全員に鋭い視線を送った。

「そうこなくっちゃ」

しかし、その冷たい視線の主に対して、彼女は笑った。

結果として、徳川や上位のメンバーには破れたものの、2軍の20人の内、3名が1軍の下位ナンバーに勝利した。彼女も、夢に向かって走り続けていたのだ。それを、徳川は痛感した。

 


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