Uー17合宿が終了した後、徳川は、自宅へと帰ってきた。帰ってくる当日だというのに、今日は、家族皆が出かけていた。それ故、徳川は茉莉を家へと招き入れていた。

「徳川くん、元気だして。ほら、平等院くんには勝てたじゃない?」
「それはそう、ですが」

合宿から開放され、これからはゆったり出来るはずだ。しかし何故か、誰が見ても分かるほどに、徳川の周りには負のオーラが漂っていた。


U−17合宿が終わる間際、徳川は平等院に試合を申し込んだ。平等院は、来年からはこの合宿には来ない。きっと、ここで戦わなくては、もう当たるチャンスは殆どなくなってしまう。徳川の誘いを、平等院は受けた。

試合は、6ー6のタイブレークにまでもつれこんだ。互いの体力は限界を迎え、あとは気力と運で試合が決まる。そんな試合展開になっていた。最後に、ポイントを続けて得たのは、徳川であった。そうして徳川は、平等院鳳凰に勝利した。借りを返したのだ。

しかし、徳川の試合は、そこでは終わらなかった。
徳川が、今年の合宿の最初に倒した相手、中学1年生の越前リョーマが、その翌日に試合を申し込んできたのだ。彼も、借りを返したいらしい。徳川は、彼との試合を了承した。彼は、この合宿で信じられないほどの成長を遂げていた。そうして6−5で、徳川は越前リョーマに敗れたのだった。

目標は、達成した。しかし、また新たな目標が出来てしまった。今度は、あいつを倒さねばならない。

「越前くんとは、プロになってからじゃないとね。彼、もう日本に居ないみたいだし」
「そう、ですね」
「一緒に、対策を練ろうよ。敵が出来るのは、いいことだと思う。私、徳川君が強くなれるように、これからもサポートしていきたい、な」

これからも、ずっと。そう言って、彼女は俯いた。赤く染まった耳が、徳川の視界に入ってきた。それを視覚して、胸が高鳴る。彼女の言葉が、反応が、自分の感情をこんなにも揺さぶるのだ。そして、彼女をこうさせるのも、自分だけであって欲しいと強く思う。そのために、俺は動かなくてはならない。彼は、強く拳を作った。

「茉莉さん」

彼女は、顔を上げた。そして、徳川の目を見る。

「俺と、付き合って下さい」
「は、はい」

慌ててそう返すと、徳川は柔らかく笑った。

「何か、照れくさいね」
「そうですね」
「宜しくね、徳川くん」
「はい、こちらこそ」

何だか心の奥底がくすぐったくなる。誤魔化すように笑うと、彼に抱き寄せられた。幸せを実感したあとで、彼女は瞼を下ろした。



(完)

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