自分は一番だったはずだ。日本選手のレベルなんて、たかが知れている。そう思って参加した合宿だったが、それは錯誤であった。
Uー17合宿が始まる際、合宿に呼ばれた者たちは試合を行った。好きな相手と試合をし、その試合に勝った者のみが、合宿に参加できる。先にそう告げられて、皆は相手を探していた。そして、どんどんと試合の組み合わせが出来てゆく。
そんな中で、皆が避けている相手を、徳川の目が捕らえた。その男も、徳川を見た。目があった瞬間に、徳川は身震いした。ああ、この男なら、少しは楽しませてくれそうだ。徳川は、彼と試合を行った。結果は、ゲームカウント6ー0。相手から1ポイントも奪えずに、徳川は敗北した。

敗北したあと、徳川は三船コーチの元で特訓を行った。厳しい特訓を乗り越え、革命軍として合宿への参加を認められた徳川は、あの男、平等院鳳凰と再び試合を行った。結果は、ゲームカウント6ー1であった。

また、負けた。まだ、届かないのか。いつになったら、届くんだ。徳川は、唇を噛んだ。かなわないこと。それは彼の心に、今まで経験したことのない<惨めさ>を生じさせた。


平等院との試合には負けたが、彼は何とか二軍の、一桁の番号のコートに所属することが出来ていた。そして今日も、午前の練習が終わった。今は、昼休みである。

彼は、携帯電話を見た。今日はこれから、彼女が、この合宿所に来るのだ。その際に、徳川への課題を持ってくるらしい。合宿の関係者に渡してもいいが、どうせだから久々に話でもしないか。時間がなければ関係者の方に渡しておく。一昨日、彼女から来たメールはそういう旨であった。

彼女に、こんな弱っているところを見られたくない。しかし、彼女に会いたいという気持ちは、それにまさっていた。彼女の顔と、声と、あの雰囲気に接すれば、きっとまた頑張れるはずだ。俺は必ず、一番になる。テニスは俺にとって、そういうものだ。

徳川は、自分たちが使っている部屋に、彼女を呼び出した。4人で1部屋を使っているのだが、今は昼前である。皆はまだ練習しているか、食堂へ行って食事を取っているかのどちらかである。この部屋を始めとして、この周辺にはほとんど人が居ない。

彼女は、今日の11時半くらいに来るそうだ。あと10分くらいで、来る。徳川は、深呼吸した。自分の心を落ち着かせるために、彼は本を手に取った。


 


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テーマ「人外ファンタジー」
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