夏が終わり、新学期が始まった。
しかし、夏休みが終わっても、姿を現さない存在が居た。それは、2年生の入江奏多と、1年生の徳川カズヤである。
二人は今、Uー17合宿に行っていた。Uー17合宿とは、日本各地から、17才までの有望なテニスプレイヤーを集め、諸外国との交流戦に向けてトレーニングを行う合宿である。
徳川は、高校1年ではあるが、海外の大会で残した成績が評価され、召集を受けた。入江は全国大会での実績が評価され、召集を受けた。そして、新学期が始まって直ぐ、二人はUー17の合宿所へと旅立っていった。Uー17合宿の参加者は、来年の2月までの半年間、定期試験期間を除いては、合宿所で生活をすることとなっている。そのため、新学期に入ってから、校内で姿を見ることはなくなった。

二人が居ないと寂しいなぁ。そんなことを思っている彼女、森下茉莉は、二人が旅立った頃から、大学の推薦入試を受けていた。そして彼女は、高校時代の部活動の功績が認められ、ある私立大学へ進学が決まった。

そうして彼女の身辺が落ち着き始めた、11月のことであった。
彼女は、週末だけ、Uー17の女子グループのマネージャーとして来てくれないか、という誘いを受けていた。
合宿期間の2月まで時間が取れて、選手たちと年が近く、合宿に関する情報をある程度知っている者をマネージャーとして欲している。コーチたちはそう話をしていた。彼女は去年、この合宿に参加していたから、合宿がどういうものであるのかは知っている。そしてつい最近、大学への推薦入学が決まったため、3月までは暇がある。そして現在、高校3年生だ。彼女は全ての項目を満たしていたため、声がかかった。

マネージャーは宿泊施設や食事などは用意されるが、基本的にボランティアであるため、交通費以外には何も支給されない。言い換えれば、タダ働きだ。
しかし、将来はスポーツトレーナーになり、テニス選手の担当をしてゆきたいと考えている彼女は、それを快諾した。指導者側から選手を見る機会はなかなかない、と考えての決意であった。やることは雑用ばかりだろうが、プロのコーチなどの指導を間近で見られる。きっと、有意義なものになるはずだ。


さて、徳川には、高校の教師たちから課題が出されていた。認められた休みとはいえ、何の課題も課されずに授業の単位は、与えられないのだ。中間テストと期末テストには参加し、各科目の担当が課す課題を提出することが、徳川には課された。

徳川のそんな課題の内容が決まったのは、彼女がUー17合宿に行くことが決まったのとほぼ同時期であった。

どうせ合宿所に行くなら、届けてやってくれ。同じ敷地内だろう。彼女がUー17合宿の手伝いにゆくこと、徳川と彼女が仲の良いことを知っている教師から、彼女はそう頼まれた。特に面倒もないから、断る理由は特にない。彼女は、教師の手から課題を受け取った。

そして彼女は、徳川に会いに、男子の合宿所へと来たのだった。

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