全国ジュニア大会の決勝が終わった。
優勝者は、幸村精市。準優勝者は、真田弦一郎。
二人は、幼なじみであった。

そして、その試合を固唾をのんで眺めていた少女も、二人の幼なじみであった。少女の名は、河原悠里。
神奈川県内に居る小学生女子の中では、3本指に入る実力を持つテニスプレイヤーである。

受賞式を終えた幸村は、観客席の方へ視線を送った。
直ぐに幼なじみである悠里の姿を見つけた彼は、目が合うなり、高くトロフィーを掲げて嬉しそうに笑った。
彼女は、彼に大きく手を振った。

そして、そんな幸村の横に、真田の姿が見えた。彼も、彼女の幼なじみである。
彼は依然不服そうな様子であったが、構わずに彼女は彼に手を振った。彼女に応えるように、手を一瞬だけあげた。


彼らの試合は、それまでの試合とはレベルが違っていた。
スコアでは6ー3と幸村の圧勝であったが、彼から1ゲームを奪ったのは、真田が初めてであった。

私も、頑張らなくちゃ。
いつか私も、全国という舞台に立つ。
そして、彼らと肩を並べるのだ。

全国という舞台は、彼女にとって遠いものではない。
Jr.大会も、あと一歩のところで参加資格を逃したのだ。
来年は、神奈川県でテニスをする者であれば誰もが憧れる、立海大付属中学のテニス部に入り、全国大会への切符を得る。
私は女子テニス部で、彼らは男子テニス部で、全国を制覇する。夢ではなく、目標だ。掴める位置にそれはある。

そうして彼女は、将来の自分と二人の姿を思い浮かべていた。そして気がつけば、周りに居る人の数が少なくなっていた。

そろそろ、二人は着替え終わっただろうか。大会が終わってからもう30分が経過しているから、もしかしたらちょうどよい頃かもしれない。彼女もその場から立ち上がり、会場の中をふらふらと歩いた。

二人と落ち合って帰ろうか、それとも先に帰ってしまおうか。特に約束はしていないから、もし会場を出るまでの間に巡り合えたら合流しよう。巡り会えなければ、精市の家に行けば、きっと二人に会える。

そんなことを考えながら、会場を歩いていた。

すると、ふいに遠くから、ポーンポーンと、テニスボールを打ち合う音が聞こえてきた。
大会は終わったはずなのに、何故こんな音が聞こえるのだろう。
疑問に思った彼女は、音のする方向へと歩きだした。

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