(これって、デートみたい、だな)



クレープを食べ終わって、俺たちは近くにあった帽子屋の専門店にやってきた。

「ゆいちゃん、これどう?」
「ばか、それじゃ顔隠れないだろ。これにしろって」
「わっ」

被ってた帽子を取って、似合いそうだな、と思った帽子を乗せる。

「うん、似合う」

そう言うと、彼女は照れくさそうに、えへへ、と笑った。それから、帽子を取った。どんな帽子か気になったらしい。

「クロッシェだ!つばが広いのって可愛いよね」
「こーいうのって、女優帽ともいうんだよな、たしか」
「うん。ゆいちゃんもおそろで買おうよ。私がベージュで、ゆいちゃんが白ね」

彼女の頭に乗せたベージュの他に、その帽子には白と黒があった。俺は髪の色が明るいから、黒よりは白の方がたしかに似合いそうだ。

「はいはい。さっきクレープ買ってもらったし、これはお……私が買う」

俺、と言ってしまいそうになった口を無理矢理止めて、一人称を言い直した。

「ほんとに?ありがとう、ゆいちゃん!」

彼女は、あまり気にしていないようだった。
会計を済ませ、俺たちは帽子を被って外に出た。

「おそろって、逆に目立つかも」
「だな。ま、顔見えなきゃ絡まれねーだろ」

そう言葉を交わしながら、3分くらい歩いたとき。彼女が足を止めて、口を開いた。

「あ、ここだよ。プリめっちゃあるところ」

そう言って、彼女はゲーセンを指さした。そこは1階にプリクラコーナーが設置されていて、機械が10台以上置かれていた。

「いっぱいあるんだな」

周りを見渡すと、確かに台数に見合うほどの人の数があった。

「何処も入ってるなぁ。あ、ここにしよっか」

彼女は、ちょうど人が並んでいない台を発見したらしい。周りと比べたら少し古そうだったけど、機能はそれなりに充実してそうだ。

「よく分からないから、任せる」
「りょーかい!」

彼女は、敬礼のポーズをして、俺の腕を引いた。帽子のお返し、ということで、プリ代は彼女が払うらしい。いつまでこのお返し合戦が続くのか、少し楽しみになった。


 
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