白澤さんと輪になる
「顔も、身長も一緒。得意な学問も一緒。考えることも一緒。やんなっちゃうよ、まったく」
「たしかにそうですね」
「違うところはやっぱり、女の子絡み、だろうね」
「白澤さんはどうして、一人に絞らないんですか?」
「僕、お酒はちょっとずつ、色んな種類をチビチビ飲みたいタイプなんだよね」
「一つのお酒が、ずっと同じ味とは限りませんよ?」
「それはそうかもしれないけど。お酒はそもそも、有限だしね」
「有限?」
「彼女たちは、いつか転成をする。居なくなって、輪にまた戻っていく。僕とは、違うんだ。僕には、輪はないからね」
「白澤さんは、白澤さんのままですからね」
「神獣だからね。死ぬことはない。人とも、何とも、繋がりなんてない」
「それは」
彼は言葉を遮った。
「あいつだって、親が分からない。そしてもう、人ではない。なのに、あいつは輪に入ってる。あいつを中心に、輪が出来る」
「だから、気にくわないんだ」
白澤さん、と弱々しく名を呼ぶと、彼はにこりと笑った。
「私が、輪になります」
「……じゃ、とりあえず抱きしめてくれる?ぎゅって」
「いいですよ」
「やっぱ、女の子って癒されるなぁ。柔らかくて、あったかくて」
「白澤さん」
「ん?」
「白澤さんは、色んな人に愛されてますよ」
「慰め?」
「真実です」
「ふーん。でも今は、キミに愛されてればいいや」


彼は、相手を複数置くことで、対象を抽象化している。具体化して、それを失って傷つくのが怖いのだ。だから、こうして相手を沢山置く。彼の生まれた立場が、彼をそうさせたのだろう。考えれば考えるほど、彼が愛おしく感じられる。

本当は、身近に絶対的な存在が居るのに。否、潜在的に分かっているから、遠ざけたがるのかもしれない。

いつか分かってくれるといいなぁ。そう思いながら、彼女は彼を強く抱きしめた。


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