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≫四回戦1







名前へのお見舞いが済んだ翌日、無事復活を果たした名前は時間通りにグラウンドへとやって来た。

「監督!」
「名前ちゃん!もう体は平気?」
「はい、すっかりよくなりました。今回は迷惑をかけてしまってすみませんでした…」

グラウンドに来てそうそう、頭を下げる。それをみて監督は慌てて否定した。

「そんなの気にしないで!まずは体が大事、なんだからね」
「…はい!ありがとうございます」

名前は満面の笑みで返すと、もう一度頭を下げた。


「……ところで…それは?」

監督が名前の手に握られている紙袋を指差した。大きさはある程度あって、どうにもここの場所では異質なオーラを放っている。

「あ、これですか?」

袋の中に手を入れて、何かを引っ張り出した名前は、それを監督の目の前に広げて見せた。

「チアガールの衣装です!」
「あ、できたのね!うんうん、可愛いじゃないの。これ今日渡すの?」
「はい。今日の7時半にダンス部の部室で待ち合わせなんですけど…少しの間抜けても大丈夫ですか?」
「うん、少しなら平気!あ、良かったら衣装渡すついでにメンタル面のこと、お願いしてもいいかな?」
「選手以上にポジティブに、ですよね?わかりました、しっかり伝えます」
「よろしくねー」

名前はひとまず衣装をベンチに置き、マネージャーの仕事に取りかかった。






「ごめんね、こんな朝早くから…」
「気にしないでよ名前。うちらも朝練ある時あるし、平気だって」

ダンス部の部室で、名前は申し訳なさそうに衣装を渡した。それを受け取りながら美亜が微笑する。

「ね、取り敢えず着てみていい?」
「あ、うん。こっちの少し大きい方が美亜ちゃん用で、こっちが紋乃ちゃん用」
「ありがとう!」
「ありがとねー!」

お互いに衣装を手にとり、広げてみた。それは、手作りと言うわりには可愛く、見事な出来栄えだった。2人は早速その衣装を身に纏う。

「わっ、可愛い!似合う似合う!」
「ほんと…?」
「ほんとだよ!2人ともバッチリ」
「う…でもこれ…ちょっと短くない?」

紋乃がスカートの裾を軽く摘まんだ。一応、下にはボクサータイプを履いているので見える心配は無いが、どう見ても制服より短いのは確実である。

「そんなことないよ。チアガールなんだから、これくらい短い方が絶対いいって!」
「うーん…そっか、そうだよね。うん、まぁこれギリギリいけるっしょ!」

まだ少し恥があるにしても、これでいくことを2人は決意した。
そんな時、ダンス部のドアがいきなり開き、1人の先輩が入ってきた。モデルの仕事をしている越智だ。

「ちょっとうるさいよ!専用の部室じゃないんだから……ってなんだあんたらか」
「お、越智先輩…」
「…ちす」
「何やってんの?…ああ、チアね。その衣装誰が作ったの?あんたたち?」
「いえ、これは名前が…」
「えっ、あっ…名前ー!!!!」

美亜が名前を指差した途端、越智は勢いよく彼女に抱き着いた。いや、飛びついた。

「せ、先輩…くるし…」
「んもー名前!今日も一段と可愛い!この衣装あなたが作ったの?さすがね、可愛いわ!」
「ありがとう…ございます…う…くるし…」

まとわりつく越智とまとわりつかれる名前。そんな2人を見ながら美亜と紋乃は唖然としていた。

「え、あの…先輩…名前と知り合いなんすか?」

おずおずと紋乃が尋ねる。

「そうよ。入学式の日に私から声かけたの」
「何て声かけたんすか?」
「モデルやってみない?って」
「な、なるほど…」
「その時にもいきなり飛びついて来ましたよね先輩」
「あれ、そうだっけ?」
「そうですよ!私あの時、本当にびっくりしたんですから」
「だってー!可愛いんだもん!」
「だもん、じゃないですよまったく…」
「取り敢えずさ、名前は着ないの?衣装」

越智がチアの衣装を指差した。

「私は着ないですよ。チアはやりませんので…」
「ええー勿体ない」
「そんなことないですよ。美亜ちゃんと紋乃ちゃんだけで十分癒されます」

ぶぅ、とむくれる越智をなだめるように、名前はふわりと微笑んだ。




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