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≫ひとつ勝って1







球技大会1日目。
監督の言った通り熱を出してしまった三橋は今日、学校を休んでいた。

「いーずみー」
「あ、田島!阿部だぞ」

早速試合に負けた阿部はたまたま見かけた泉に声をかけた。それに気づいた泉は、目の前を走っていた田島にも声をかける。

「今日三橋は?」
「休みー」
「そうか。俺さ、もう負けたから昼休みちょっと行ってくるわ」
「三橋ん家に?」
「おう」

「阿部も三橋ん家行くのー?」

泉と会話していたら、田島が急に乱入してきた。

「"も"って何だ"も"って!」
「今日昼休みに俺達三橋ん家までカレー食いに行くんだよ!」
「カレー…?」
「朝メールしたら昼飯がカレーだって言ってたんだよ」
「え、メール…返ってきた?」
「きたよ」

それを聞き、阿部はふと考えこんだ。実は、阿部も朝にメールを送っていた。だけど返事はまだ返ってきていない…何故なんだ…阿部はそれだけを悶々と考えていた。そんな時、泉が阿部に尋ねた。

「俺達今から浜田の応援行くけどお前も行く?」
「浜田…バスケ?」
「ああ」
「じゃあ俺も行こ。名前もバスケらしいからな」


体育館へ入ると、ちょうど女子バスケの試合が行われていた。しかもたまたま名前が出ている試合で、阿部達は試合がよく見える位置に腰をおろす。

「おお、意外に運動神経いいのな」
「いや…普通だろ。なんつーか悪くもないし特別いいってわけでもねぇ」
「そうか?ほら、また点入れたぞ」

見れば、ちょうど泉が言った通り、名前がどんどん人を抜いて点を入れたところだった。実は今日の試合のほとんどの点が名前が入れたもので、それなりに活躍しているのだ。

「名前、身体小さいのにスゲーな!」
「……そう…だな」

何故だろう、田島に言われると妙に説得力がある。阿部はこれ以上何かを言っても意味がないので一言頷いておいた。

それから試合が終わり、名前は阿部達に気づいていたのか、一目散に側に寄ってきた。

「応援に来てくれたんだ。ありがとう」
「名前凄かった!!」
「ありがと、田島君」

いきなり抱きつく田島に、もうさすがに慣れたのか特に何の反応もせず、受け応えする名前。
するとその場所に、何人か人がわらわらと集まってきた。よく見ると、同学年の人だけではなく先輩もいるようだ。

「名前格好良かった!!!!」
「名字さん、素敵だったっす!」
「やっぱり、あなたは何しても絵になるわ」

とまあ、こんな感じであっという間に名前は囲まれて、彼女に抱きついていた田島は離れざるを得なくなった。仕方がないので泉と阿部の側に戻って様子を眺める。
そこで名前を見ながら泉が尋ねた。

「何か、前よりスゴくなってねぇ?」
「まぁな…」
「いつから?」
「桐青に勝ってから」
「…ってことは今日からじゃん!」

阿部の言葉に衝撃を受ける泉。

「え、でもマネジってあんま関係なくね?」
「野球部がちょっと有名になって、マネジは誰だって話になるだろ?特に男子なら」
「ああ…まぁな」

確かに、今名前の周りには男子も集まっていた。人数的に男子女子、半分ずつと言ったところか。

「でも女子もいるよなぁ」
「ああ、何かあいつって少し話しかけづらいとこがあったらしくてさ。なかなか話しかけられなかった時に名前が野球部のマネジって知って、急に女子も増えたってわけ」
「へぇ…男女共に人気なんだな。つか、確かに話しかけづらいとこあった気がするな。今はそんなことねーけど。最初とか俺、話す時ドキドキしてたぞ」
「マジで?」

とてもそんな風には見えなかったので少し阿部は驚いたが、多分泉はあまり表情には出ない人なのだろう、阿部はそう解釈した。


「ところでさ、そろそろ助けに行かなくていーのか?」
「あ?」
「名字ってさ、話す前はスゲー話しかけづらいオーラ出てるけど、一回話したら全然そんなことねぇだろ?クールそうに見えて実は可愛い…みてーな」
「へぇ…」
「へぇ…っておま…。とにかく、男子からしてみればクールな印象が消えて、迫りやすくなるってこと。女子の方はいいけど男子には注意しといた方がいいぞ」
「そうか…」

泉の忠告を受け、名前の方に目を向けた。なるほど、確かに危ない状況かもしれない。名前は1人の男子生徒から腰をがっしりと押さえられ、どこかに連れて行かれようとしていた。多分先輩なのだろう、彼女はすごく困った顔をしていた。

「あー…さすがにあれは…。ちょっと行ってくるわ」
「おう、いってらー」

泉に送り出され、名前を助けに向かった阿部。その間、泉と田島は試合観戦に移ろうと視線をうつした。今は、男子バスケに交代していてちょうど浜田が活躍中で、二人とも応援返しということもあり、精一杯応援した。


それからしばらくして、名前達が戻って来た。

「あ、名前大丈夫だったかー?」
「うん、なんとか…」

田島がひょっこりと現れて、心配そうな表情で名前の手を握った。名前はそれをやんわりと握り返しながら曖昧に笑う。

「さすがに腰つかまれた時にはどうしようかと思った…」
「相手、先輩だったの?」
「うん、しかも3年生」
「うひょーマジで!?そりゃ断りづらいよなぁ」

田島の言葉に他2人も頷く。やはり、先輩というだけで色々やりづらいのは事実だ。優しい先輩ならいいが、もちろん怖い先輩だってたくさんいるだろう。これから、前よりも警戒心を持って生活すべきだと、今日阿部と名前は悟らされてしまった。

「ところでさ、俺達昼休みに三橋ん家に行くんだけど一緒に行くか?お前も何か渡すもんあるんだろ?」
「あ、うんちょっとね。でも私、昼休み志賀先生のとこにも行かなきゃいけないから後から行くよ。先に行っといて」

「わかった、家わかるか?」
「完璧」

そうして一旦、阿部達は名前と別れた。



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