×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

≫お祝い1







「さ、入って入って」
「お邪魔しまーす」

百合に促され、そそくさと玄関へと入った阿部は、名前の後ろをついていくような感じでリビングに向かった。
そしてリビングへと足を踏み入れた瞬間、何者かに抱き着かれた。


「隆也君!ひっさしぶりー!!!!」

「うおっ…琴乃さん!」

思い切り抱き着いたのは名前の姉の琴乃だった。

「あーもうまた背が伸びて!!私遂に越されちゃった!!今隆也君何センチあるの?」
「ひゃ…170っす…」
「きゃーっもう成長期って羨ましい!」
「琴乃さんはもう十分高いじゃないですか」
「そうかしら?」
「女の人で168センチは結構高いほうかと…」

「そうよ琴乃。あなたお父さん似でこの家じゃ一番高いのよ?」

途中で百合も会話に加わる。ここ、名字家で一番背が高かったのは名前の父親で、183センチあった。代わって母親は普通の身長で162センチだ。


「名前ももう少し成長すればいいけどね」
「これからどんどん伸びるんだもん」

茶化すように言う百合に、名前は頬を膨らませた。



「あの…琴乃さん…いい加減離れてくれませんか…」

いまだに抱き着かれたままの阿部は少し困った顔をした。すると琴乃の後ろからいきなり手が現れ、彼女をひっぺがしていった。

「悪い、隆也。こいつもう酔ってんだわ」
「隆司(りゅうじ)さん…!」

やっと離れた琴乃を見て阿部はホッと息をついた。
阿部を助けてくれた隆司とは、琴乃の彼氏兼婚約者のことだ。予定としては名前が高校を卒業したら結婚するつもりで、名字家にもよく顔を出すので阿部も知り合いだった。

「助かりました。ありがとうございます」
「ったくよーまだ飲むなっつったのに…ホントすまねえな」
「いえ…。そう言えば、久しぶりですね隆司さん」
「ん、あぁそうだな。隆也も名前も元気してたか?」

「はい」
「私も元気です。隆司さんはお変わりないですか?」
「ああ、別に何もねーよ。つかさ、いい加減隆司さんって言うの止めねぇか?隆也はともかく名前まで名前呼びだと何だかなぁ…」
「じゃあ何て呼べば…」
「お兄ちゃんでよろしく」

名前の頭にポンと手を置き、にっこりと笑った。隆司は琴乃より実は3つ年上で、25歳の立派な会社員だ。優しくて頼り甲斐があり男前。だけどどこか子供らしい部分もありとても付き合いやすい人だった。

「わかりました。じゃあお兄さ…」
「ちゃん」
「……ちゃんで…」


そう言うと、隆司は満足げな笑みを浮かべてリビングへと琴乃を連れて戻って行った。


あのあと一通り食事を済ませ、名前と阿部は名前の部屋に入った。


「あー…食った。もう入らねぇ」
「お姉ちゃんに無理矢理食べさせられてたもんね」

クスクス笑いながら名前が言った。


「笑い事じゃねーよ。マジで吐くかと思った」
「隆也お姉ちゃんに頭上がらないもんね」
「多分この家で一番(気が)強いよな」
「多分ね」

「しっかし…まさか今日お前ん家泊まることになるとはな…」
「良かったじゃん、お泊まりセット置いといて」
「まぁな」

阿部も名前同様、ちょっとしたお泊まりセットを彼女の部屋に置いていた。そのため、このような急なことにも対応できるのだ。

「それに明日は授業ねーから別に問題はないな」
「そうだね。あれ、隆也は明日サッカーだっけ」
「ああ。お前は?」
「私はバスケ」
「ふーん…あ、名前。ちょっとこっちに来い」


名前のベッドに腰を下ろしていた阿部は名前に向かって手招きをした。それに首を傾げながら近づいた名前は、阿部の目の前に着いた瞬間、ポスンとベッドに寝かせられてしまった。


「もしかして…今からするの…?」
「もちろん」

恐る恐る尋ねる名前に怪しい笑みで返す阿部。

「や、ダメダメダメ!」
「…何でよ」
「今日…みんな…いるから…」

少し顔を赤らめて阿部から視線を反らした。名前の部屋には鍵がついていて、誰かが急に入ってくるという心配はないのだが、声は勿論下まで聞こえるだろう。みんなが寝ているならまだしも、琴乃も隆司も夜更かしする人だ。百合も今日は琴乃達に付き合って起きてるから尚更分が悪い。こういう行為をするというのはもうみんな知っているだろうが、それとこれとは話が違う。


「声抑えればいけんだろ」
「だめ…声出ちゃうよ…。特に、私入れられちゃったらもう…我慢できない…と思う…」
「…わかった。無理矢理はしたくねぇからな…ヤらねーよ」
「ほんと?」
「あぁ。ただし…」

阿部は名前を自分の方に向かせて、ジッと瞳を見つめた。


「入れる前まではする」


「へっ…」


一瞬思考が停止した。だけど阿部はいたって真面目だ。


「どういう意味…」
「要するに入れなきゃ問題ねぇんだろ?だったらいつもの手順で入れる手前までやりたいってこと」
「でもそれじゃあ、隆也が辛くない?」

そう言えば、阿部は一瞬驚きの表情を見せた。だがすぐに頭をガシガシとかいて、はぁ…とため息を漏らした。


「お前なぁ…もしかしていつも俺は自分の欲のためにだけにお前を抱いてるんだとか思ってんのか?」
「違うの?」
「違うよ。俺ァお前の身体触るの好きだし、名前の色んな表情を見るのも好きだ。だからお前だけイかせるのも俺には好きなことなんだぞ」
「知らなかった…」
「ま、一回も言ってねぇしな。……ということで」


阿部はグッと顔を近づけ、首元から徐々に上へとキスをしていった。



*prev | next#


back