×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

≫2



八時。
食事を終えた選手達は、事前に分かれていたAチームとBチーム、各々がやるべき事をこなしに動き出した。因みに西浦はBチーム。皆は初めにグラウンドの整備を行い、食事の片付けを済ませて、第一試合西浦対桃李戦へと意識を移した。

先行は西浦高校。桃李の先発は、兵庫大会で準決勝までずっとスタメンだった一年の上代祥真である。当然遠征組だと思われるような実績の持ち主が、あろう事かBチームで投げてくれるというのだ。理由としては不調か故障だろう。

「…故障…なんですかね」
「おそらくね。何となくだけど球に迫力がない」

名前はスコアを片手に、監督の横に並んだ。一打席、二打席と上代の投球を見ていると、段々と故障への疑いが確かなものになってくる。途中まではなかなか調子が良さそうで、西浦の新人用に組んだ打順が厳しい感じで追い込まれたのだが、二巡目になってから上代のボールは荒れ球が増えてきた。打つ気満々だった田島がデッドボールを食らってしまうほど、不調が見え隠れしている。しかし、西浦の方もあまり上手くは廻っていないという現状で。

「無死一塁…」
「ここは送る。オーソドックスな形で点取れないなら名前ちゃん、早急に打順組み直すよ!」
「はいっ」

監督が栄口に出したサインはバント。結果は、想定とは違うが二点差で無死一・二塁となった。次も確立でいったら正攻法は犠打であるため巣山もバントさせる。するとボールが予期せぬ所でバウンドし、なんと無死満塁となってしまった。内野は前進守備のままだ。次の花井は転がすか上げてでも外野までボールを持っていかなくてはならない。そんな気を引き締めて待ち構えた一球目。なんとボールは大きく逸れ、その上捕手が取り損ねた為田島がホームへと帰ってきた。だがその次のボールでは花井は押されてあまり上手くいったとは言えないプレイになり、同点止まりで交代となった。

「…田島君」
「……む……なに、名前」
「あはは、そんな顔しないでよ」
「だってー…いや、いいんだけどさ!俺が両立出来ないからだし!」

花井のバッティングを見た後位から、どうにも釈然としない表情の田島。皆…特に三橋の前では極力見せないようにしているが、名前は何となくだが田島の心中を察していた。マネージャー、トレーナーとして、常に名前はアンテナを張るように心掛けているからである。

「…確かに捕手との両立はなかなか難しいと思う。だけど、だからこそ、捕手側でリード考えるのは絶対にバッティングに生かせるはずだから…」
「うん…そっか…うん、ありがとー名前!俺は俺の仕事をするよ!」
「うん、頑張って…こんなことしか言えないけど」
「ホントありがとー!目一杯頭使ってくんよ!」

といって元気にグラウンドへ駆けていったものの。二巡目は全打者真っ直ぐを投げさせるつもりだったらしく、三回裏が終わったところで阿部に注意をされていた。事細かく口を出す阿部に、田島も今は自分がキャッチャーなのに、と少し不服そうな顔をする。だが三橋の言った一言で、逆に捕手に目覚めそうな勢いで色んな気持ちが湧き上がってきた為、先程の事など全く気にならなくなってしまった。


一方で、五回表に廻った頃の桃李。投手の上代がいよいよ不調を明らかなものにし始めた。

「…監督、やっぱり上代君思い切り腕が振れてない感じです」
「うーん…やっぱりそうかぁ…期待の一年生何だからゆっくり養生させてもらった方がいいと思うけどね…」
「はい…」

心配そうに上代を見つめる名前を横目に、監督は腕を組み、グラウンドに目を向けた。打席には沖が立っている。一球目、空振り。そして二球目。ボールはバットに綺麗に当たり、五点目が追加された。しかし、肝心な上代はというと。

グラウンドの真ん中で肩を押さえて顔を青くしていた。遂に交代である。

「名前ちゃん、」
「はい」
「今桃李のコーチも誰も付けないから、良かったら行ってあげて」
「……わかりました」

名前は持っていたスコアを篠岡に預け、皆の邪魔にならないよう、急ぎ足でベンチから出た。

*prev | next#


back