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≫役割1







榛名達と別れて、皆の所へ帰っている名前、三橋、阿部は、先程会話した内容を思い思いに頭に巡らせながら歩いていた。

「あ、そう言えば三橋。お前榛名に何聞きたかったんだ?」

ヒョコヒョコと歩く足を止め、三橋に尋ねる。そんな阿部に合わせて三橋と名前も足を止めた。

「は、速い…球、の、秘密…」
「え、それ聞いてないじゃん!」
「き、聞いた…よ」
「いつ!」
「さ、さっき」

────意味わかんねぇなァ…

阿部は段々自分から遠ざかっていく三橋を、疲れた表情で見つめていた。そして助けを乞うように、名前に視線を向ける。その視線を受け取った名前は、仕方なく説明する。

「…さっき筋肉触らせてもらったでしょ?アレのことだよ。繋がった?」
「あー……微妙…」
「あ、べく…ん!だからね、俺、」

多少は理解したからよし、とでも判断したのか、離れていた三橋が駆け足で舞い戻ってきた。


「俺は、振りかぶって投げるよ…!」


三橋はそうはっきりと言い張った。
暫くの間、それぞれの空間に沈黙が流れる。が、阿部は慌ててハッとした。

「…いやちょっとさ、何がどーしたのかさっぱりわかんなくてイラッとすんだけど!!」
「や、あの…榛名、さん、スゴい…から、筋肉…俺、振りかぶる…」

怒鳴られて三橋は、わたわたと説明を加えた。いつも通り言葉がおぼつかないが、阿部はなんとなく理解出来たようだ。

「…振りかぶって、筋肉ない分少しでも補おうってことか?」
「……………………うん!」

返事の前に随分と考える間があったが、どうやらこれで会話は成立したようだ。阿部も思わずガッツポーズをキメていた。







それから西浦ナインは学校へと戻り、練習に移った。三橋も田島相手に投球練習だ。先程自分から振りかぶって投げる、と言ったこともあり、監督の指導の下早速ワインドアップの練習に取りかかっていた。
そんな時。

「監督!」

防具をつけた阿部が、姿を現した。

「一球だけいーすか!」
「ダーメ!ったく聞き分けないねぇ…自分のメニューに戻んなさい!名前ちゃんはどうしたの?」
「か、監督ー!」

監督の質問に阿部が答えようとした途端に、その本人が姿を現した。息づかいからして走って来たのだろう、額にはうっすらと汗が滲んでいる。

「すみません監督、ちょっと目を離した隙に居なくなってました…」
「あははっ、頼むよ名前ちゃん!阿部君たらすーぐ受けたがるんだから」
「はい、もうメニューに戻させます…」

会話からして些か阿部が子供扱いされているような気がしないでもないが、コレばっかりは仕方がない。ある意味中毒なのだ。いつもは年相応な性格をしていない阿部も、そこだけは譲れない。

「ほら戻ろ」
「……ああ」

名前に諭され戻っていく阿部は、なんとも哀愁漂う姿であり、近くにいた花井と沖が哀れみの目を向けていた。



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