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≫少しずつ1







次の日の朝。三橋達三人が作ったご飯から一日が始まった。

「…予想のはるか上いく出来だね名前ちゃん…!」
「そうですね…千代ちゃんお疲れ様!」
「あはは、私は別に何もしてないよー」

並べられた食事を前にして三人は小声で話した。篠岡は謙遜しているが、実際なかなかの出来である。




「ごちそうさまー!」

皆が食べ終え、篠岡が片付けるために台所へ向かった隙に阿部達はアンダーを替えて練習のための前準備を行っていた。
そんな時。


「おーおー、合宿中に持ってくんなよー」

泉の声が部屋に響いた。どうやら三橋から田島に男子高校生らしい本、所謂エロ本を返していたところをたまたま見たらしい。

「わり、昼休憩に速攻家置いてくる」
「まてまて、その前にちょっと見せなさい」
「これはもう、泉見たやつだよ。泉の好みっぽいやつ、また今度持ってきてやんね」
「俺の好みって何よ」
「アレだろ?修学旅行の自由時間に琵琶湖行って、水着で水中エッチ」



田島の爆発的な発言に近くにいた人達に一斉に笑いが起きた。勿論泉は真っ赤になって抗議する。しかしその流れのまま、皆はそれぞれの好み、及び好きなシチュエーションの話になっていった。
そして巣山に話が振られた時だった。


「妄想って何?そんなんする?」

キッパリと言い張った。皆は勿論有り得ないと言う顔で詰め寄るが、巣山は同じことをひたすら言うだけであった。

「いやいや、するでしょ普通!」
「だからしねーって!」
「沖だってするだろー!?」

いきなりの水谷の振りに、少しびっくりしたものの、沖も自分の妄想について語った。

「わ、和服とかかな」
「西広は?」
「シチュエーションじゃないけど、白人系は好きだなー」
「花井は?」
「まー英語教師とかイイよなー」

少し照れながら話す花井の後ろで、話したそうにウズウズしていた浜田が遂に口を開いた。

「俺はもーハーレム!男の夢ったらハーレムでしょ!阿部は?」

その流れで話を振られた阿部は、少し渋い顔をした。

「好みなら俺にもあるけど、妄想は意味がわからねぇ」
「ええっ!?」
「だよなぁ!!」

驚きを隠せない皆とは裏腹に、勢いよく共感する巣山。


「はぁ!?だっておま、名字がいるだろ?」
「…は?何が?」

泉の問いに理解できないと言った感じで聞き返した。

「だから、せっかく彼女いんだから妄想くらいするだろ!?」
「しねーって」
「嘘だぁ!名字にこういうことしたいなーとか思わないの?」

加えて水谷も抗議するが、しないものはしないのだ。阿部の言うことは変わらない。

「いや、普通にキモイだろ。お前らは彼女できたらそんな目で見るのか?」
「見るってかやりたいことくらい妄想するだろ!」
「へぇ…?」
「ああーっ、もう!お前想像力なさすぎ!」

水谷にここまで言われるとは思っておらず、若干阿部は切れ気味だ。

「お前らがエロ過ぎるんだよ!」
「妄想してる奴のがエロ関連に夢見てると思うけど?」
「はぁ!?だってお前ら要するに自分で考えたエロ話をネタにしてるってことだろ?キ、モ!」
「違うね!お前が即物的すぎるんだよ!」
「名前をそういう風には見てねーよ!」

泉と阿部が段々二人だけの世界に入っていき、周りは若干苦笑いだ。しかし話は少しずつ展開していき、具体的な内容に突入し始めていた。些か本筋から離れ始めていると言っても過言ではないだろう。

「じゃあお前、名字とはどーゆー風にヤってるわけ?」
「別に…普通だけど」
「やりたいこととか本当にねーの?」
「ねぇよ」
「あーあ、だからお前は即物的なんだよ!」
「はぁ!?コレが普通だろ!?」

どちらが正しいとかそういうものはない。だからこそこの討論の終わりが見えないのだが、忘れてはいけない事が一つある。

今は合宿中だと言うことだ。




「はい、そろそろグラウンド行ってくださいねー。残りは夜にでも話してください」

当然練習のことなど頭から飛んでいた皆は、突然現れた名前に激しく動揺した。これが先生や監督ならまだしも、途中から話の中心になっていた名前が現れたものだからたまったもんじゃない。もう赤くなるどころか青くなるしかない状態に、皆は慌てて部屋を飛び出した。



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