×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

≫思案1







「お、阿部だー。懐かしい」
「元気だったかー!」

合宿当日、学校で車から降りた阿部を見て、わらわらと皆が集まった。そして少し会話をしたあと、差し入れのポカリを運び始めたので、阿部は母親と共に監督へ挨拶に向かった。

「お、名字もおはよ」
「あ、花井君、おはよー」

ポカリを受け取りに行った先で、花井は名前とバッタリ出会った。

「この箱で最後だよ」

そう言ってそれを運びだそうとする名前に、花井は少し慌てたように箱を奪った。

「いいよ、俺が運ぶ」
「ありがと」
「男の役目だ」
「ふふ、さすがキャプテン」

「名前ちゃん!」

どこまでも優しい花井に甘えて、名前は箱を手渡した。すると後ろから監督の声が聞こえる。名前は短く返事をすると、そのまま駆け足でその場を離れた。




「名前ちゃん、合宿中阿部君が斎藤さんに行く時、どうする?」

監督の所へ向かえば、そこには阿部に加えて三橋もいた。それを見てあることを察した名前は一回コクンと頷いて、口を開く。

「今回は三橋君が一緒に行くんですよね?じゃあ私は二人の報告を待ちます」
「…よくわかったね。私言ったっけ」
「いえ、なんとなくです。でも、三橋君と一緒に行かせることが目的なんですよね?」
「まあね。ということで三橋君、阿部君。ちゃんと説明聞いてきてね。特に三橋君!名前ちゃんにも説明しなきゃいけないんだからね!」

名指しで念をおされた三橋は「はひっ」と彼特有の声を上げて、何度も頷いた。それを見て監督は一仕事終えたような表情で父母会の人達の元へ向かった。三橋も皆の所へ戻る。
一方、一人残された阿部は何やら腑に落ちないらしく、微妙な面持ちであった。名前はそんな彼をゆっくりと見上げる。

「……何か言われたの?」
「何か…斎藤さんトコ行くだけじゃなく朝メシまで一緒に作れって」
「三橋君と…?二人っきり?」
「ああ…」
「成る程ねー」

そうきたか、と名前は笑う。

「成る程ってなんだよ」
「内緒」
「教えろよ」
「やーだ。やってみればわかるよ」
「はぁ…それ監督にも言われた」
「ふふっ」

ガックリと肩を落とす阿部の傍らで、楽しそうに自分の後ろで腕を組む名前。それを見て阿部は益々怪訝そうな顔をした。

「あっ…と、私監督に言わなきゃいけないことあったんだった!隆也、階段ついてなくて平気?」
「ああ、ゆっくり上ればな」
「じゃあごめん、私行ってくる」
「おお、」

走り去った名前を見送ると、阿部も膝を庇いながら皆の元へ向かった。



*prev | next#


back