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≫目標1







「ええと…障害物を踏んで捻ったと。あー…内側側副靱帯てのがちょっと裂けてますね」

斎藤接骨院に着いた名前達は、阿部のレントゲン写真を見ながら先生の説明を受けていた。

「球技は野球で、えー…阿部君のポジションは?」
「キャッチャーです」
「それで…次の大会はいつ?」
「新人戦が二週間後です」
「君はレギュラーなの?その大会には出なければいけないのかな?」
「はい!」

そう聞いて先生は顎に手を当てて少し考え込んだ。

「二週間…だと……ちょっとギリギリって感じだなぁ」
「え、間に合うんですか!?」

先生の返答に嬉しそうに食いつく阿部。すると、先生が損傷した靱帯について説明を始めた。
掻い摘んで説明すると、完全に元通りの靱帯になるには三、四カ月はかかると言われていて、二週間では瘢痕組織というものができた状態にしかならない。靱帯ほどではないが、瘢痕組織は一応の強度と弾力性があるので大体動けるようにはなる。が、瘢痕が一番太くなるには三週間かかるため、二週間ではまだ細いということだ。そのため、少しでも早く瘢痕が成長するように血を送ってあげる事が大事になってくる。

「まぁ、あとやるべきことは怪我してない所の筋力維持。患部のトレーニングは段階をあげる度に私の許可をとってください」
「はい」
「とりあえず今日明日は絶対安静だぞ」
「はい!」

これで今日のところはひとまず終了となった。阿部は改めて病院で松葉杖を借り、外へ出る。監督は一旦志賀に電話を入れた。

「今花井君から言われたんだけどね、チームとしての目標決めたいから阿部君の意見を紙に書いて私に預けてくれだって」
「目標……ですか」

監督から紙を受け取り、書き始める阿部。その間に監督は名前の元へ寄ってきた。

「ねぇ名前ちゃん。患部以外のトレーニングと左足のリハビリってお願いしても大丈夫なのかな」
「あ、そうですね…多分大丈夫だと思います。患部は先生の指示を仰ぎながらやりますので問題はないかと」
「そっか!助かるわ、ありがとう」
「微力を尽くします」

そう言ったところで、阿部が紙を渡してきたので監督は後ろを向いた。ついでに名前も後ろを向くと、監督が「あ、」と声を漏らした。

「患部以外のトレーニングのことだけ一応私も聞いとこうかな。手伝えることがあれば手伝いたいし」
「そうですね…とりあえずは各部分の筋トレと、あ、特に心肺機能はすぐ低下するんで全体運動になるように工夫して、体幹や反射も維持していくことですかね」
「うん、なるほど。じゃあこっちでメニュー立てれる分は立ててみるよ」
「助かります」
「と、いうことで。名前ちゃんも目標書いて」
「え、」

不意に目の前に出された紙きれに、名前は動揺を隠せない。自分はミーティングに参加するのだからいいではないかと思っていたのだ。だがそんな思いとは裏腹に、監督は紙を手渡してくる。

「あ、の…私ミーティング行きますよ?」
「ああ、そのことだけど、今日は一旦阿部君の家まで一緒に帰ってもらっていい?」
「何でですか?」
「トレーニングのことを話し合ってもらいたいのと、食事について阿部さんとも相談しといて欲しいの。間に合いそうだったら途中からミーティングに参加しても大丈夫だから」
「わかりました…」

不本意だが仕方がない。名前は渋々頷き、目標を書いて監督に手渡した。
───絶対ミーティングに間に合わせよう。



「それじゃ、お疲れ様でした!」
「ありがとうございました!」

監督が自転車で去ってしまったあとすぐに名前達も車に乗り、阿部宅へ向かった。

「悪いな、つき合わせて」

車の中で小さく洩らした言葉に名前は首を横に振った。

「平気よ。隆也が心配なのは確かだし」
「だけどお前ミーティング出たかったんだろ?」

本心を言い当てられ、名前は一瞬呼吸を止めた。そしてゆっくりと彼の方に顔を向ける。

「まぁ、ね…。やっぱりマネジでもあるわけだからミーティングに出ることだって立派な仕事だと思うんだ。だからね、頑張って途中からでもミーティング参加しようと思ってね」

そう言い切った名前に阿部はぷっ、と笑みを零した。そしてそのまま彼女の頭をポンポンと撫でる。

「お前はホント…偉いよな。だけどんな気ィ張ってたらいつかパンクするぞ」
「平気よ」
「だーめーだ」
「む……とにかく今日は何が何でもミーティング行くからね」
「はいはい」

阿部はもう一度頭に手を置き、笑みを零した。



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