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 ▼甘縒り


「…なぁ、お前って兄妹いたよな」
「うん、兄さんが一人ね。それがどうかした?」
「ん…いや、ちょっとな」

午後3時。丁度お昼寝時なこの時間に、ふと銀時が私に疑問を投げかけた。神楽ちゃんはお昼寝中で、新八君は午後からお通ちゃんのライブがあるとかで、今は私と銀時しかいない。そんなタイミングを狙ってか狙わずか、普段話さないような質問内容だった。

「気になるじゃない、何よ」
「いやいいって」
「………」
「やめて、そんな目で見ないで」
「じゃあ教えてよ」
「あー…」

頭をかきながら、しまった…とでも言いたげな表情で銀時は徐に口を開いた。

「昨日テレビでな、兄貴がいる妹は甘え上手らしいって言っててな」
「へぇ…そんなもんなのかな」
「あくまでも一般論らしいが」
「それで?」
「…お前はんな感じしねぇなと思って」
「成る程、そこに繋がるのね」

未だにスッキリしない顔の銀時に、私は肩を竦めると、彼の隣に腰を下ろした。

「だって、私兄さんと遊んだ記憶どころか、一緒に過ごした記憶が殆どないもの」
「……だーっ!ほらな、そうやって切り返してくると思ったから言うのヤだったんだよ!」
「でも銀時から言い出したじゃないの」
「だから、しまったって顔しただろー?いやまぁ、俺の所為だよな…うん…」
「ははっ、何よもう。別にそんな気に病む事じゃないわよ?」
「つってもなー…」
「……言っておくけど、銀時が想像してるような感じじゃないと思うよ」

そう言うと、キョトン、と私を見つめる銀時。そんな顔が可笑しくてつい吹き出すと、ますます銀時は不思議そうな表情をした。

「どーせあれでしょ、兄さんは家を継ぐ為に隔離されて勉強漬け。継ぐ必要のないお荷物の私は家族の誰からも相手にされず、孤独に育った…みたいな」
「そ、そこまで暗い過去だとは思ってねぇよ…お前の家族には一、二回会ったことあるしな」
「ああ、そうよね。だったら尚更よ、気負う必要はないわ」

そう言って、予め持ってきておいたお茶を啜る。私自身、本当になんでもないというのに、銀時の顔は相変わらず晴れない。一体何をそんなに躊躇っているんだろう。スッキリとしない、何かが引っかかっているような表情の銀時を見て、私はそう思った。

「…でもおめー、一緒に過ごした記憶あんまねェんだろ?」
「そりゃあ兄さんは跡継ぎだからね、勉強する事はいっぱいあるしそう簡単に遊ぶ時間なんかとれなかったわよ。だけどね、朝昼晩三食は必ず家族皆で食べたし、小さい頃は一緒にお風呂入ったりしてたみたい。あんまり覚えてないけど小さすぎて。だから孤独…ではなかったかな。ま、欲を言えばもう少し兄妹間で遊んでみたかったな…とは思う」
「そうか…それだったらお前の今の性格も頷けるな」
「私の性格?」
「甘えるのは下手だし何でも一人で背負い込もうとするし、中身が年相応じゃねぇっつーか」
「それを言ったら銀時もでしょ」
「俺ァ家族とか知らねーから、そういうのよくわかんねぇんだよ。つーか俺が甘えん坊だったら引くだろ」
「そう?意外に可愛いと思うけど……あ、もしかして私が甘えるの下手なのが嫌だった?」
「えっ、嫌じゃねぇよ別に」
「じゃあ…もう少し、甘えて欲しいな…みたいな?」
「う……」
「あら図星?」

いたずらっぽく笑うと、銀時は「あー…」と声を洩らしながらまた頭をかいた。そこでようやく合点がいく。先程から銀時が何かを危惧しているような表情だったのは、これだったのだ。

「笑うな。ったく…」
「っ…ははっ、ごめん」

私は笑いすぎで出てきた涙を指で拭うと、落ち着くように深く息を吐いた。

「…ふー…そっか、努力してみるね」
「いやいや、んな無理矢理頑張るんじゃなくてだな…なんつーか、もう少し肩の力抜いて俺に寄りかかれたらお前も楽なんじゃねぇかと思って…まぁ俺のただの、ちょっとは甘えて欲しいっつー願望もあったりなかったりするけどな」
「…うん、ありがとう」
「お前とは、いい関係でいたいからな…」
「うん。じゃあ銀時ももっと私を…ううん、私達を頼ってよ?」
「…ああ」

そう返事をして若干はにかむ銀時に、私はそっと寄りかかってみた。


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