ピリっとした緊迫感
背筋を伝う冷や汗

服はボロボロで、体中傷だらけ


これが、本当の命を懸けた戦い
不覚にも今が一番楽しんでいる



まだだ

まだ、足りない


ヴァンは口角を吊り上げて、対峙するアースを鋭い目で見据えた




「もっとだ…もっと本気を出せよ」




地を踏みしめ、弾かれたように駆ける
頬を伝う血が風で散り、花弁のように宙に舞った


右足を前に出し重心を右足に掛け、左手を前に突き出し心臓を狙う


しかしその手を掴まれ、足払いされて投げられてしまう
しかし空中で体勢を整えて着地し、手首を回す

思いのほか強い力で握られたようで、手首が軋んでいた




「そう簡単に私はやられないぞ」

「いいねェ…そうじゃねェと張り合いがねェ!」





ヴァンは死体の山に転がるように落ちている剣を二本拾いアースに向かって斬り掛かった

アースも持ち前の武器で応戦する

武器同士が切り結び、火花が飛び散った





「じわじわ苦しませて殺してやるよォ…!」

「ふんっ、やれるものならな!」




互いの武器が服を裂き、肌に傷を作る

痛みを感じないのかと思うほど、二人の表情はほとんど変わらなかった

男は狂喜に歪んだ顔
女は不愉快そうに眉を顰めている



そこには二人の乱れる呼吸と、剣がぶつかりあう金属音、服や肌が切れる音が響く


剣で武器を弾き、片方の剣で突きを繰り出す
それを紙一重でかわされ、こちらの心臓が狙われる

しかしその剣先が寸でのとこで止まる
彼女が殺す事に躊躇したのだ


興が醒めた
溜息が口から零れる



「お前、死ねよ」




心臓に一突き

刺されたアースは口から血を吐き、苦しそうに歯を食いしばっている




「今更何を躊躇してんだよ。殺し合いで手を抜くって事は死を意味してんだぜ」

「…うるさい」




心臓を突く剣を伝って血が地面に零れ落ちる

地面は血の池が出来上がっていた




「次生まれ変わった時には絶対殺してやる…っ」

「次はもっと面白い事を期待してるぜェ?」




剣を抜くと、体を支えられなくなったのかアースの体が地面に倒れた

眠るように目を閉じて、それ以降目が開くことはなかった





「はあ…つまんねェなァ」




ヴァンはアースの姿を見つめて溜息を吐く
彼女の横に血の付いた剣を捨て、その場を去った




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