「お前の"好き"は…どう言う意味の"好き"なんだ、か…」
軽く好きという言葉が言えてしまうララに、水色の髪の青年…ダイは――「俺に会いたいと思ったら会いに来い」と言った
好きという言葉に違いなんてあるのかと、ララは会えない時間で考えた
愛情が分からないララ
彼女は一人でいる事を極度に嫌い、誰かといる事に固執する
そこに愛は一切なかった
それでも彼女は誰かと一緒にいる事が第一だったからそこに愛がなくてもそれでよかった
だから、自分から一人の人に本気で会いたいと思った事がない
今までそうだった
そうだったはずなのに
「…会いたいって、思ってる」
自分から会いたい
初めてそう思ったのだ
なら会いに行けばいいのだとララは着替えと化粧を済ませると、貴重品を持って家を飛び出した
会えるんだと考えるとトクンと高鳴る胸
これは一体何なんだ
分からないけど今は彼に会いたい
彼女の頭には彼に会いに行く事しかなかった
走って、走って
ダイがいる場所に着いた頃には、息も切れ切れだった
呼吸を整え、ダイがいるか様子を見る
「あれ…隣の子、誰だろう…」
とても親しげに接するダイと知らない女の人
さっきまでは弾んでいた胸だが、今はズキンと痛む
こんな感情知らないララは、どうして胸が痛むのか分からなかった
処理出来ない事で頭がいっぱいいっぱいになったララの目からは大粒の涙が零れ落ちる
「何で私、泣いてるんだろう…」
胸がぎゅっとして、苦しくて、切ない
いてもたってもいられなくなったララはその場から走り去った
涙が止まらない
溢れ出る涙を拭いもせず、ララは家まで走り続けた
バタンと大きな音を立てて扉を開け、家に転がるように上がり込む
ベッドに倒れ込み、枕に顔を埋める
堪えられなくて声を上げて泣いた
「何で、何でこんなに苦しいの…?」
隣の女の人と話してる時のダイの表情は、見た事のない顔だった
あの子に笑いかけないで
そんな風に思う自分が怖かった
今まで誰にもこんな風に思った事がないのに
「何なの…訳が分からないよ…」
それからは家にいるのも辛くて、街を一人でふらふらと彷徨っていた
ナンパ目的で話し掛けて来た男と話してみたりしたが、楽しくなかった
今までなら話していると落ち着いていたのに、今はまったく楽しくなくて
他の男と一緒にいるのに脳裏に浮かぶのは彼の笑顔だった
会いたい、今会いに行かなくちゃ
唐突にそう強く思った
ララは男に謝ると走り出した
「ダイ…っ!!」
数週間会わないでいただけなのに、顔を見れただけで胸が満たされるような感覚になる
「ダイに会いたかった…」
「…おぅ」
無愛想だけど、ちゃんと向き合って話を聞いてくれる
「ダイが他の人と喋ってるの見て、嫌な気分になった…」
「…おぅ」
「その人よりダイと仲良くなりたい…!」
号泣しながら、しどろもどろに話すララの言葉をダイは静かに相槌を打って聞いてくれている
「…私ダイの事、他の誰よりも好き…」
やっと、友達としての好きと恋愛としての好きの違いが分かった
「俺も、好きだ」
「…っ!」
愛情を知ったララにその言葉は何よりも嬉しい言葉
喜びと恥ずかしさでララの顔は真っ赤に染まる
「えっと…その…ありがとう」
語尾が尻すぼみになっていくララの声はちゃんとダイには聞こえたようで、彼は優しい表情で笑ってくれた
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