花言葉 | ナノ
シロツメグサの花輪




「卒業おめでとう、綱海。」
「おう!」

桜が咲く春頃。大海原中学校では今日卒業式が行われていた。いつもは着崩している制服をピシッと真面目に着ているみんなの姿を見ると、ああ、もう卒業しちゃうんだな、と改めて思う。
綱海の制服を見ると第二ボタンが無かった。誰か他の女の子にでもあげてしまったのだろうか。惜しいこと、したな。

「綱海、」
「ん、なんだ?」

「これあげるよ。」と綱海の頭にシロツメグサで作った花輪を被せる。ああ、思った通り似合わない。当の本人は「なんだこれ?」と自分の頭に被せられたものを目で見る。「東京に行っちゃう綱海に、私から餞別だよ。」そう言って私は作り笑いを浮かべた。

「これが餞別かよ。」
「頑張って作ってやったんだから感謝しなさいよね。」
「これつけて東京行けと。」
「東京に行っても時々はその花拝みなさいよ。」
「いやいやいやスルーかよ。てか枯れるし。」
「枯れても大事に取っておくことね。」
「なんだそれ。」

やや不機嫌そうに綱海は口を尖らせた。「それじゃ私帰るから。」「え、もう帰っちまうのか?」「あんたと違って二年は色々と忙しいの、じゃあね。」素っ気なく私は綱海に言うと、ひらひらと手を降りながら後ろを向く。

「…ねえ綱海、」
「何だ?」
「その花の花言葉、綱海は知ってる?」
「いや、知らないけど…。」
「そう、じゃあ私が教えてあげる。その花の花言葉はねえ、」


(私を思い出して、って言うのよ。)
(え、)
(だから東京行ってもその花を見て私を思い出して、ね。)


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