b | ナノ
chain(3/5)
「久しぶりだよな〜、井上の部屋来んの。全然変わってねぇな。」
「まあ、適当に座っててよ。」
DVDプレーヤーにDVDをセットして。
テレビのスピーカーから流れ出る、音楽。
それに比例してテンションが上がっていく、のしん。
堪らなくなって、
のしんの腕を引っ張って、
そっと唇を重ねた。
驚いたのか瞬間的に俺を押し退ける、のしん。
「いっ…井上……!!」
「何?」
「『何』じゃねぇだろ!?」
少しだけ、傷つく。
服の袖で、のしんが口拭いてるから。
「……ねぇ、のしん。俺ちょっと溜まってるんだよね。」
「井…上……?」
「男同士ってクセになるらしいよ?」
のしんは青ざめて『冗談だろ?』と呟く。
――冗談?
俺のこの、のしんを想ってきた数年間を『冗談』なんて軽い言葉で片付けて欲しくない。
そんなこと、本人には言わないけど――…。
「井上…お前合コン行くんだろ?溜まってんなら、そこで彼女でも見つければ……」
――意味がない。
のしんじゃなきゃ、意味がないんだよ。
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