伸ばして、触れて、離して、触れて、
その繰り返しを積み重ねる。
「っ、けほ」
「風邪ですか」
「んー、引いちゃったかもしれないっスね」
「大丈夫ですか」
心配そうに覗き込んできた、その隙に頬に口付ける。
「駄目って言ったら泊まりに来てくれる?」
「…行きません」
うーん、あと何回ねだったら、答えはイエスに変わるんだろう?
でもそんな所も好き。
後ろから覆い被さるように抱き締める。
「離れなくていいんスか、風邪移るかもしれないっスよ?」
「大丈夫です」
押し倒して無理やりだって、今この場でも可能なのにね、
安心して腕の中に収まって、可愛い人。
「黒子っち」
「?……っん、」
振り向きざまにキス、キスは許してくれるから。
ありったけの気持ちを込めて。
突然のことに驚いて少し見開かれる目も、肩に触れるとびくつくのも、柔らかい肌も、全部好き、
ああ、早く抱きたい。
俺だって健全な青少年なんだよ?
「っん、ん!……ん、ぅ…」
息継ぎに唇が少し開いた瞬間、すき間から舌を入れて、歯列をなぞって上顎を舌先で撫でる。小さく漏れる、高くて甘い彼の声。
深いキスを許してくれるまでに、どれだけ時間がかかっただろう。
それは、少しずつ増える笑顔の数に比例している。
「っふ……っ、ん、っひゃ!」
首筋を舌で舐め上げた瞬間、上ずった声が上がった。
顔を見ると、
自分の声に驚いたのか、顔を真っ赤に染めて、片手で口を押さえて。
「………かわい」
耳をなぞるといやいやをするように身体をよじるから、肩を掴んで逃がさない。
「っぁ、やです、…っや、」
「何が嫌なの」
「変な声でて、恥ずかしい、」
声を抑えようと肩に顔を押しつけるから、
「可愛いから声我慢しちゃダメ」
肩を掴んで身体を離す。
ねえ、俺知ってるよ?
キスして、身体触っていくうちに、目が潤んで反応みせて、
そうしてだんだん、敬語が崩れていくの。
「ねえ黒子っち、」
話しかけながら頬と首筋を一撫ですると、びくりと肩を震わせる。
駄目だ、もう限界だ。
だって俺のものはもう張り詰めていて、
君のだって、デニム越しにも分かるくらいに。
いいよね?
「俺、もう待たないよ?」
耳元で囁くと黙って頷く君の、
頬さす朱さえ愛しくて。
「大好き」
それが俺達の始まりの言葉。
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はじめてのはじまり。
黄瀬は、何度もお預けを食らい続ける気がします。