「黒子っち、ねえ、それ一口ちょーだい」

「嫌です」

「なんでっスかー」

「これは僕が気に入っているシェイクだからです、そんなに飲みたいなら自分で買ったらどうですか。100円ですから」

「ええ〜」


黒子っちひどい、とか何とか言いながら、目の前の彼はへらへらと笑う。

「なんか機嫌悪いっスねー」


誰のせいだと思っているのか。
ここ最近毎日校門で待ち伏せされて、お気に入りの店にまでついて来て、鬱陶しいことこの上ない。

だから話し掛けられても最低限のことしか返さない、隙あらば厭味を返そう、
そう決めているのに、実行しているのに、どうして彼は折れないのだろう。


「制服デートっていいっスねー」

「デートは双方がそう認識することでデートになるんですよ」

「じゃあこれはデートっスねー」

「………」


そうか、どんな厭味も聞こうとしていないのか。

相手にするのが面倒で無視していると、彼は調子に乗って僕のシェイクを飲み始めた。


「!ちょっと、それ僕の…」

「もらったもん勝ちー」



ああ、不愉快だ。


「なんでついて来るんですか、毎日」

「黒子っちが好きなもの知りたくて」



へらへらと笑う彼の顔。


「どうしてですか?」

「黒子っちが好きだから」

「………」


不愉快だ。
そういうことをさらりと言ってしまえる彼が、

それに気付いていた僕が。

そして、


その気持ちを少しでも嬉しいと思ってしまっているのが、なんだか悔しくて、



「…不愉快です」

「ふふ」



恐らく僕の気持ちに気付いているであろう、彼の笑顔が腹立たしくて、

取られたシェイクを無言で奪い返した。




















*******
拍手ログ。

アールグレイ:ベルガモットで香り付けをした紅茶。

黒子=紅茶、黄瀬=ベルガモット、というイメージで。
いつの間にか浸食されている、恋のはじまり。

20120520

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